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2009年10月26日 (月)

怒りの消火法ワークブック

イラスト版 子どもの認知行動療法(2) だいじょうぶ 自分でできる怒りの消火法ワークブック」ドーン・ヒュースナー著 ポニー・マシューズ絵 上田勢子訳(明石書店)

このところティーン向けの本をよく読んでいます。といっても子どもに紹介したいからではありません。私自身がこうした本を通じて学びたいと思っているからですcoldsweats01。たとえば、以前ご紹介した般若心経の本は、仏教の入門書でしたし、先日ご紹介した意欲に関する本は、私にとっては、心理学の入門書でした。

そういう意味で、本書は認知行動療法の入門書です。「怒り」という感情を学び、対応の仕方を身につけて行くように工夫されています。

「怒り」という感情は、確かに厄介です。激情に任せて極端な行動に走ってしまうのは、なにも子どもばかりではありません。人生経験を積んだお年寄りだって例外ではないでしょう。ですから、怒りのメカニズムを子どもにも理解できる理屈で説明するのは、かなり難しいことに思われました。その上、理解させるだけでなく、行動を変容させて行くというのですから、尋常ならざる難しさです。

そのように半信半疑で手に取った本書でしたが、冒頭の説明を立ち読みするうちに、みるみる引き込まれました。
まず本書は、「ワークブック」というだけに、作業をしながら読みすすめる形式を取っています。最初の作業は、怒りをイメージすること。この本を読む子は、「怒りに震えている最中」であることは、まずないでしょうから、怒った時の気持ちを思い出せなければなりません。そこでヒューブナーさんは、次のように投げかけ、3つの作業を促します。

  • 怒りはとてもふつうのことなんだ。だから、怒りを表すためのことばがたくさんあるんだね。たとえば、こんなことばは怒りを表すことばだよ。ほかにもないか、考えてみよう。
  • 怒っているとき、どんな気持ちになるか考えてみよう。まずはじめに、怒った顔をして、腹を立てている感じを出してみよう。そして、怒った気持ちを体の中に感じてみるんだ。
  • 今度は、これまでで、だれかに怒られたときのことを全部思い出してみよう。

怒りの気持ちを書き出すことや、実際に怒った表情をして怒りの気持ちを思い浮かべてみてください。確かに怒りがイメージできますよね。なかなかうまいやり方だなと思いました。このように怒りの感情を、リアルに思い出させたところで、次のように続けます。

こんなふうに怒りについて考えていくと、怒りなんてないほうがいいと思うかもしれない。でも実は、怒りはいいことなんだ。なにかいやなことが起こっていると、体が教えてくれているのが怒りなんだ。
問題なのは、怒りがあっという間に大きくなってしまうということ。

ご覧の通り、本書は「怒りを無くそう」と主張しているのではなく「怒りと上手につきあおう」と言っているわけです。「怒っちゃダメ」なんて言うより、極めて現実的だし対処法を冷静に考える上で大切な姿勢だと思いました。
こうした現状認識ができた後、ヒューブナーさんは、怒りに関する秘密の言葉を紹介します。

自分を怒らせるのは自分だけ

つまり、怒りは相手がもたらしたものではなく、自分自身が頭の中で生産したものだというのです。これは、子どもたちには理解しにくい考え方でしょう。ですから、かなり丁寧な説明がなされています。

怒りについて正確な理解ができたところで、ようやくその消火法の解説が始まります。考え方や認識の工夫はもちろん、なるべく体を動かす、とか、こういう呼吸法がよい、といったかなり具体的で科学的な説明になっています。詳しくは、どうぞ本書をお読みください。

先日子ども哲学というシリーズの本をご紹介しました。この本や本書を見るとき、欧米では、こうした難しいことを子どもに考えさせる本が、ずいぶん出版されているなあと感じます。しかしそれは裏を返せば、日本の出版事情がお寒い、とも言えるわけです。本書も、内容はとてもよかったものの、残念ながら翻訳のまずさが目立ちました。子ども哲学では、重松清さんを監修者に立てていたのは、そういうわけだったのか、と妙に納得がいきました。

認知行動療法について勉強になっただけでなく、子どもの本のあり方についていろいろと考えさせられた一冊でした。このシリーズはまだまだ続くようですから、今後もチェックしていきたいと思います。

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