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2009年10月15日 (木)

水はなんにも知らないよ

「水はなんにも知らないよ」 左巻健男著(ディスカヴァー携書)

本書のタイトルをお読みになって、どのように感じますか? 水は生物ではありませんから、「なんにも知らないよ」と言われても戸惑いますよね。当たり前ですから。

ところが「水は答えを知っている」という本があるのです。水に「ありがとう」などのよい言葉をかけると、美しい結晶になるという中身のこの本は、ずいぶん売れました。しかもこの本に感動した小学校の先生が、授業で積極的に取り上げたことすらあったとのこと。

これはゆゆしき事態、ということで左巻さんは、本書を書いたそうです。左巻さんは、理科教育・環境教育が専門の先生。本書のような啓発本を書くとともに、「ニセ科学フォーラム」という勉強会を立ち上げ、活動しておられます。そのあたりの経緯について触れた部分をご紹介しましょう。

2001年の文科省科学技術政策研究所の調査によれば、日本の大人の科学技術への理解度は、日米欧17か国中13位となっています。また科学技術への興味や関心も、調査国中で最低です。しかし一方で、我が国の大人は、それでも科学技術は大切だと思っています。つまり、科学のことはわからないが、科学的だという雰囲気や、科学的であるとするお墨付きには齢傾向があるのです。(中略)そこをニセ科学は突いてきます。科学と無関係でも、論理などは無茶苦茶でも、科学っぽい雰囲気をつくることができれば、ホイホイと信じてくれる人たちがいるのです。

誠に耳の痛い話です。私自身、数年前に左巻さんの「ニセ科学フォーラム」に参加し、ニセ科学に対するセルフチェックをさせてもらったことがあります。その結果、私は結構ニセ科学にだまされやすい傾向があることがわかりましたweep。自分の興味の向きだけでなく、幅広く読書をしようと心がけるようになったのは、それからだったような気がします。

このようなニセ科学の概要を述べた後、第2章では、怪しい水ビジネスを広く取り上げ、それらの主張のうち、どこまでが科学でどこからが欺瞞なのかを詳しく説明しています。取り上げられている主な「水」は、次の通りです。

  • 波動水
  • 磁化水
  • マイナスイオン水
  • π(パイ)ウォーター
  • トルマリンを使った水
  • クラスターの小さな水
  • アルカリイオン水
  • 活性水素水

いやあ、ずいぶんあるものだと思いました。だます側はいろいろな科学的知識を使ってくるなあと思います。確かにトルマリンなんて、一時期はやりましたよね。科学的に正しい事柄に、微妙に嘘を混ぜて行くというのがニセ科学のポイントなのだとわかりました。
本書の発行は2007年ですから、現在ではもっとたくさんあるかもしれません。「アルカリイオン水-活性水素水」のように、同じ方法で作られながら、違う名称で売られている水もあるそうですから。

「水」だけを話題にしても、これだけ出てくるのですから、世の中には、専門家から見たら一笑に付されるような「科学的に証明された」商品というのが蔓延していることでしょう。それには、「裏を取る」「根拠を確かめる」といった姿勢が大事なのだろうと思います。
たとえばこれまでこのブログで紹介した本の中には、ネットに異論が掲載されているものが少なくありません。紹介文を書く際、私は必ずそれらの論調も確認し、その上でなお「紹介する価値あり」と判断できれば紹介して参りました。結果的に私の判断が間違っている場合があるかもしれませんが、最低限の確認はしていることはご理解いただければ幸いです。

現代は、メディアリテラシーだけでなく、科学リテラシーとも言うべき力が必要になってきたのでしょう。そんなことを考えた一冊でした。

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コメント

著者の左巻健男です。読んでくださり、有り難うございました。今はさらに放射能関連でもニセ科学が跋扈していますね。

投稿: 左巻健男 | 2011年11月21日 (月) 10時01分

著者からのコメントありがとうございました。放射線関係のニセ科学についても、ぜひ書いてください!

投稿: 村岡明 | 2011年11月21日 (月) 11時54分

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