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2009年10月19日 (月)

やる気はどこから来るのか

「やる気はどこから来るのか 意欲の心理学理論」奈須正裕著(北大路書房)

多くの場合、私は土日に文書作成を行います。さっさと土曜日に仕上げてしまえば、日曜日は有意義に使えるはずなのに、たいてい土曜日をぐずぐず過ごしてしまい、結局終わるのは日曜日の夜、ということが少なくありません。
そういえば、子どもの頃も夏休みの宿題はいつも8月31日にやっていたような気がします。どうして自分は、やるべきことを先延ばしにするのか、なぜやる気が出ないのか、というのは、当時からずっと抱いてきた疑問でした。

これに対して私が導き出したのは、「自分の意志が弱いから」という答えです。けれども本書の著者、奈須さんは、必ずしもそうではないとおっしゃいます。

意欲が出たり出なかったりするには、それに対応する心のしくみ、心理学的なメカニズムがあるのです。あえて極端な言い方をするならば、あなたはただただそのしくみに従って、いわば合理的にふるまっているだけなのです。あなたの意志といったものは、一般的に信じられているほどには強い影響力をもちません。
カギは、あなたが置かれてきた環境と、それをあなたがどう解釈してきたかにあります。意欲が出ないような環境におき続けられ、あるいは意欲が出ないようなものの考え方をしてきたから意欲が出ないのであって、それ自体はきわめて理にかなった、つまり合理的なできごとなのです。

つまり、意志よりも環境とその解釈だというのです。その証拠として、まずいくつかの動物実験を紹介しています。何をやっても結果が同じ、という経験を重ねると、無気力になってしまい、それは「学習結果」として定着してしまうのだとか。挫折を繰り返してきた自分の人生を振り返ると、ある意味納得の説明ですweep

とはいえ「過去の経験の積み重ねです」という説明だけでは救いがありませんし、対処法がわかりません。それゆえ本書では、「認知・原因・期待・感情」をキーワードに、やる気について説明しています。それぞれ章の名称に使われています。

  • 第2章 認知が意欲を左右する
  • 第3章 原因を何に求めるか、それが問題だ
  • 第4章 期待が開くあなたの未来
  • 第5章 感情を認知的に科学する

目の前の現象や環境を、自分がどのように解釈したかというのが認知。奈須さんは、「ねらい通りのさいころの目を出す」という課題の例で説明しています。さいころを誰かに振ってもらうのと自分で振るのでは、数学的には同じ確率なのに、自分で振った方が良いと考える人が多いのだとか。
以下「原因」は、起こった現象の原因を特定する心の働き、「期待」は、起こりうる現象を予想する心の働きです。古今東西の心理学者は、こうした心の働きを解明しようとしてきたのだそうで、本書ではその理論の概要が紹介されています。ただ、ジュニア向けの本の割にこの解説がかなり難しいのですがcoldsweats01

私が最も興味深かったのは、「感情」についての説明でした。必ずしも自分の意志でわき起こるものではないのだそうです。かなり環境に依存しているのだと。そういえば、テレビのお笑い番組などで、ちっとも面白くないのに笑い声が効果音として付与されていることで、なんとなく面白いような気持ちになることがあります。逆に強烈なファンばかりのコンサートに、義理で参加したのに気がつくとノリノリで踊ってた、なんてこともあるでしょう。私は、日本人的な付和雷同型意識で引き起こされているのだと思っていましたが、これらは、心理学的に説明できる行動なのだそうです。

ではどうすればやる気が起こるのか──本書では最終章である6章に、その提案が書いてあります。もちろんそれは「こうやれば絶対うまく行く」といった類の提案ではありません。けれども、「認知・原因・期待・感情」のメカニズムを知った上なら、少なからず得るところがあるはずです。

そういう意味で、本書は「やる気」に着目した、心理学入門の本なのだと思いました。理論の説明が多く、正直奈須さんの説明も「?」なところがあるので、少々骨は折れますが、読む価値のある本です。学校の先生にとっては、「やる気を削ぐ授業」や「認知を妨げる授業」の実例が紹介されているので、その点でも参考になることでしょう。

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