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2009年10月16日 (金)

教育現場にも広まったニセ科学

昨日ご紹介した記事で伝えきれないことがありました。

「水はなんにも知らないよ」の第1章の中で気になる節があったのです。節のタイトルは「教育現場にも広まったニセ科学」。決して分厚くはない本書において、1つの節を割くというのは、著者の左巻さんが大きな問題として認識しているからなのでしょう。私も、これを読んで、ちょっと暗い気持ちになりました。

この節の内容をまとめると、およそ次の通りです。

「水は答えを知っている」に感化された小学校の先生が、この本を元に道徳の授業を行った。「水は、言葉の美醜に影響を受ける→人間の体は70%が水→悪い言葉を使わないようにしよう」という授業。しかもこの指導案は、TOSSという巨大な教員団体のWebサイトに、公認の指導案として掲載されていた。
科学者からの批判もあってか、現在「水の指導案」は何の説明もなく削除されている。今度は「万能微生物EM」を話題に環境教育を行っているようだ。TOSSには「水」の授業を広めてしまった反省が必要である。指導案を利用している先生も、WebサイトなどでTOSS以外の、多様な考えに触れる努力をして欲しい。

著者の左巻さん自身、TOSS(Teachers Organization of Skill Sharing)の前身である教育技術の法則化運動に協力したことがあるのだそうです。その上での批判ですから、非常に気になり、今回改めてTOSSのWebサイトを見てみました。確かに大量の指導案や指導資料が掲載されています。しかも、全国に1万人以上の会員がいるとのこと。これはすごい団体です。

この中で「EMを使った環境教育」の指導案を見てのけぞりました。「肥料・屎尿・堆肥」など用語の区別がなされていないという指導案や、「腐敗と発酵は違う」といった間違った説明がなされている指導案がありました。これらは、百科事典等でちょっと調べればわかることです。何より、なぜ「EM」という商品を使うのでしょうか。宣伝活動になりますから、少なくとも公立学校ではまずいと思います。

先生方の知を結集し、再利用できるようにして行こう、というTOSSの理念は素晴らしいですし、広がる理由もわかります。けれども、であればこそ、内容についてもう少し吟味し、正確さを期していただきたいと思います。そしてもし間違っていたら、きちんと長期間それを掲示するなどの配慮が必要なのではないでしょうか。以前ご紹介した通り「Clean Honest Beautiful」を社是とした会社があります。教育団体であればなおのこと、そうした部分が求められるのではないかと思いました。

なお、左巻さんはニセ科学およびそれを扱った教育を批判するだけでなく、理科教育・環境教育への具体的提言を行っておられます。その中心は出版活動でしょう。私が読んだのは、大人もハマル週末オモシロ実験 (ブルーバックス) という本のみですが、他にも左のように本当にたくさんの本を出しておられます。

出版活動における左巻さんの哲学は、もし一言でまとめるなら「おもしろく、行動判断の基準になるような本物の知を届けたい」ということになるでしょうか。詳しくは「水はなんにも知らないよ」のあとがきにあるので、ぜひお読みください。理科教育に興味関心のある方には、ぜひ気に留めていただきたいと思いました。

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