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2009年11月 2日 (月)

【内なる目】としてのメタ認知

現代のエスプリ 【内なる目】としてのメタ認知 自分で自分を振り返る」丸野俊一編集(至文堂)

メタ認知という言葉は、このブログでもときどき使いました。もともとは、学術用語なのでしょうけれど、近頃はビジネス雑誌でも目にするくらい一般的な言葉になってきたように思います。

この言葉の意味について、私は、「自分の行為や認識を高次で認知すること」と一応は理解しているつもりです。重要な視点であることも理解しています。けれども、現実場面をメタ認知という考え方でとらえようとすると、わからないことだらけなのです。この考え方を業務や製品に生かすことなど想像もできません。「何かいい参考書はないかなあ」と思っていた時、本書に出会いました。

出会ったと言っても書店で偶然見かけたわけではありません。メタ認知に関わる、ある学会のセッションに参加した際、本書の編著者である丸野さんが、発表に対してコメントをなさっていました。これが切れ味鋭く、印象的なコメントだったものですから、早速ネットで検索し、役に立ちそうだなあと思って購入したのがこの本です。

本書のご紹介の前に、「現代のエスプリ」というシリーズについて少しご紹介しましょう。書籍のカテゴリとしては雑誌(月刊誌)ですが、知のアーカイブ的な側面あるため、大きな書店ではバックナンバーが数多くそろえてあります。いわゆるムック誌ですね。このシリーズ刊行の趣旨は、あちこちに書かれていますが、本書の表2に記載された文章がもっとも素晴らしいと思いました。

欠乏は人間を苦しめるが、豊潤は人間を迷わせる。ただむやみに読めば良いという時代は去った。何を読むべきか、量よりも選択があなたの進歩を予表する。今日の文学・文化・歴史の理解に基本的に必要な題目の選択と代表的著作の選択を読者に代わって遂行するこの「エスプリ」とともに雑踏するマスコミの迷路の中を歩こう。

これが昨日今日書かれた文章ならさほど驚きませんが、このシリーズの創刊は昭和38年。この時代に「豊潤は人間を迷わせる」と断じた視点はさすがです。

さて前置きが大変長くなりました。本書は基本的に心理学の本です。メタ認知は教育との関わりが深いということで、教育系の話題が数多く取り上げられています。けれども、シリーズの趣旨は「題目と著作の選択を読者に代わって遂行する」ことです。ですから、同じ心理学者でも様々な専門家が執筆しています。たとえば、「脳の働きと心」を研究している苧阪さんは「メタ認知と脳科学」という記事、動物実験から認知について研究している板倉さんは、「メタ認知は人間にのみ固有な現象か」という記事を書いている、という具合です。さらに、心理学者以外に、教科教育の専門家が、「国語教育とメタ認知」「算数教育とメタ認知」という記事を書いています。

あまり中身も確かめず、丸野さんという名前のみで購入した割に、良い本でした。メタ認知に関する広範な知識を得ることができたように感じています。特に脳科学と心理学の関係や動物の行動研究との関係、障害児教育との関係などは非常に興味深く読めました。
一方、著者間でメタ認知に関するとらえ方が微妙に(あるいは明確に)異なるように感じる場面もありました。正直混乱しましたが、編者の丸野さんは、きっとあえて掲載したのでしょう。そうした混乱も含めて「あなたもメタ認知してね」と言うことでthink

「現代のエスプリ」は、近頃心理学系の本が多く出されています。今年の4月から発売がぎょうせいに移管されたそうですが、今後も目が離せないと感じました。

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