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2009年11月23日 (月)

教える力、育てる力

「教える力、育てる力―一流スポーツ指導者の秘伝公開」(講談社MOOKセオリー

企業経営者の書籍やビジネス雑誌の中で、スポーツ指導者の指導法がしばしば紹介されます。なじみの深い指導者の言葉なら、わかりやすく、親しみやすい話になるから、という理由ももちろんあるでしょう。けれども、組織運営や人材育成で共通するから、という理由の方が大きいような気がします。

「なら、一斉に集めちゃえ!」ということでもないのでしょうけれど、本書は、一冊すべてが「スポーツ指導者の言葉」です。

こういう企画の本は、ありそうでなかったのではないでしょうか。話題を「教える」「育てる」にフォーカスしながら、取材先をスポーツ指導者のみに絞ってしまうと、単調な本になってしまう危険性があるからです。その点本書は、次のような工夫をしています。

one取り上げる指導者を幅広く選定し、様々な観点で紹介している
two指導者メインの記事と、指導法メインの記事を混ぜて構成している
threeすべて署名記事(文責が明らか)のため、文章の質が高い

oneの「幅広さ」というのは、競技種目や年齢だけではありません。たとえば、著作や評論で有名な、内田樹さん(神戸女学院大学教授)が、合気道の指導者として登場していたり、24時間テレビのマラソンを支えるランニングプロデューサー坂本雄次さんが紹介されていたり、といった具合です。もちろん、有名指導者も取り上げられていて、佐藤義則さん(楽天球団投手コーチ)、風間八宏さん(筑波大学サッカー部監督)の言葉は印象的でした。

  • 指導の信念は「走り込みと投げ込み」という伝統的なもの。それを、若い投手が納得できるよう、伝え方、教え方を工夫している(佐藤コーチ)
  • 選手が自らが考える、個を鍛えるサッカーを目指している。そのためには指導者も自分の頭で指導を考える。海外のモノマネなどしない。(風間監督)

佐藤コーチの記事は、インタビュー形式、風間監督の記事は独白形式と、まとめ方こそ違え、現役時代の活躍ぶりから現在の指導法に至る過程が非常にうまくまとめられています。特に風間さんの記事では、実業団からの誘いを断ってドイツに渡った経緯などが印象的でした。

またtwoの「指導法がメインの記事」とは、次のようなタイトルと内容です。

小学生をやる気にさせる魔法のテクニック
  北島康介、松坂大輔を生んだ名門クラブ、ジェフ市原・千葉の「サッカーお届け隊」の秘密に迫る
なぜ「同じ釜の飯」が大切か
  古豪復活を果たした慶応高校野球部、埼玉一の甲子園出場回数を誇る浦和学院の生活習慣

oneは指導者考え方や哲学の話が中心だった一方、twoは指導法が具体的に書かれています。やはり実績を上げているチームというのは、それなりに根拠があるものだなあと感心しました。結局、小学生や高校生の指導法や組織運営の方法は、大人向けのそれと基本的には同じなのです。「小学生だから」とか「難関の入社試験を経てきたのだから」といった予断を持たず、今眼前にいる対象を、よく見るということなのだなあと実感しました。

そして最後、threeとして挙げたように、本書の記事は質が高いです。こうしたムック本は、単行本と比較して価格が安いことから「やっつけ記事」が少なくありませんが、本書はまったく違いました。これで税込み880円は、非常に安いと思いました。「講談社セオリー」というシリーズは、これからも注目して行きたいと思います。

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