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2009年11月16日 (月)

プロ論。

「プロ論。」B-ing編集部:編(徳間書店)

仕事、好きですか?」というのは、本書の帯に大きく書かれたメッセージ。「はい、好きです」と答えられる人が、世の中に何人いるでしょう。他ならぬ、自分自身はどうだろう、好きだとしたら、仕事が好きなのか、会社が好きなのか──たった一行の問いかけでしたが、ずいぶん悩んでしまいました。

帯に書かれた、この問いに対する答えは

毎日がつまらないのは、あなたが「真のプロ」じゃないからです。

というものでした。「答えになってないんじゃないの?」と思う一方で、「じゃあ、真のプロってどんな人?」という疑問も湧きます。その疑問は「読んでみようかな」につながるわけですから、よく考えられた帯の文句だと思いました。

帯だけではありません。本書は本としての作りが非常に巧みです。まずはその章立て。若い人が仕事について悩む時の気持ちがそのまま章の名称になっています。

  1. 会社で頭一つ出たいとき
  2. 会社を辞めるべきかどうか迷ったとき
  3. やりたい仕事が見つからないとき
  4. 働くことがイヤになったとき
  5. 仕事でヒットを飛ばしたいとき
  6. 苦しい時期を乗り越えたいとき
  7. 好きなことで食べていきたいとき

各章に5~9人の「プロ」の話が割り当てられていますが、実は章立てにはさほど意味はありません。ただ、無意味でもありません。本書は第1章からきっちり読んで行く、といった性質の本ではありませんから、こうした緩やかな章立ての方が適切でしょう。
それかProら、ページデザインも秀逸です。左は養老孟司さんの記事のトップ部分。大きな写真の直後に大きな文字で「若い人の弱点は、今の自分で世界を考えたがること。自分が変われば、世界も変わることに気づいていない」と書いてあります。写真と印象的な言葉で、養老さんの言葉を大づかみにできるデザインとなっています。さらに、下の「柱」部分には、奇数ページだけ巨大なページノンブルとが章の名称が記載されています。これは目次からの探しやすさへの配慮でしょう。「○○さんの言葉が読みたい」という場合に便利です。

そして肝心の記事も興味深い話ばかりでした。50人もいると、中には「?」な人もいないではありませんが、それでも収録されている言葉は、短いながらも含蓄があるものばかりです。これは、すぐれたインタビュアーとライター(同一人物かも知れませんが)のおかげでしょう。どの人の言葉にも、きらりと光るフレーズがありました。

  • 何のために夢を求めているかを、はっきりさせるんです。愛する人を幸せにしたいとか、もっといい生活をさせてやりたいとか(石橋貴明さん)
  • 「転職35歳限界説」なんてものがあると聞きますが、とんでもないですね。自分を変えるチャンス、自分を伸ばすチャンスはいくらでもあります(中村修二さん)
  • 自分に合った仕事を考えるのではなく、生きがいを感じる仕事を探してみてほしい(佐々淳行さん)

本書は、就職情報誌「B-ing」に連載されていた、各方面のプロへのインタビューを加筆・訂正したものです。掲載時期は2000年~04年。最も古い記事は、約10年前に掲載されたもので、本書自体も2004年の発行です。けれども語られている内容は、今読んでもまったく古くありません。ピックアップされた50人は、現在でも活躍されている方がほとんどです。50人を選んだ側もプロだったということでしょう。ですから本書はシリーズ化され、「プロ論2」「プロ論3」「プロ論情熱探訪編」など、続編が次々と発刊されました。このクオリティが維持されるなら、それも当然の結果でしょう。

この雑誌は、歴史ある(1975年創刊)情報誌でしたが、昨年休刊となりました。就職情報の流通が、ネットに移行したことが原因でしょう。情報がネットで素速く、しかも無料で手に入ることは一見よいことですが、こうしたプロの手になる優れたコンテンツが作りにくくなるという欠点もあります。

「プロとしての仕事」だけでなく、コンテンツの未来についても考えさせられた一冊でした。

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