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2009年11月13日 (金)

クリティカル進化論

「クリティカル進化(シンカー)論―『OL進化論』で学ぶ思考の技法」道田泰司・宮元博章:著/秋月りす:まんが(北大路書房)

以前ご紹介した「人についての思い込み」という本を通じて、「クリティカルシンキング」(以下クリシン)という考え方があることを知りました。思い込まないための一技法として紹介されていたのです。
この本の著者である吉田さんから、今回ご紹介する「クリティカル進化論」をご紹介いただきました。「クリシンの入門書として適切では」ということで。むろん、私にとっての入門書という意味ですが。

実はクリシンの入門書は多数出版されています。試しにアマゾンで「クリティカルシンキング 入門」で検索してみると、5冊ヒットしました。書名だけでこうですから、おそらくはもっと多いでしょう。その中で、本書がなぜ私向けなのかといえば、まんががポイントになっているからです。

本書のタイトル「進化論」でピンと来た人も少なくないことでしょう。本書はクリシンを説明するために、秋月りすさんのまんが「OL進化論」を話題として使っています。この経緯について「はじめに」では次のように書かれています。

知識は現実から離れたところで学ぶものではない。日常生活の中に位置づけながら身につけなければ、本当に役に立つ知識にはならない、と筆者たちは考えています。そこで本書は、筆者たちが当代随一の非クリティカルシンカー・ウオッチャーと目するマンガ家、秋月りすさんの「OL進化論」を使いながらクリティカル思考について説明しています。秋月さんのマンガには、私たちのだれもが日常ふとおかしがちな「クリティカルでないものの考え方や行動」が、四コマで簡潔に示されています。秋月さんのマンガのおかげで、(中略)ともすればむずかしくなりがちな考え方や概念を、楽しくわかりやすく身につけることができると思います。

「OL進化論」を読んだことのある方なら、この説明がよくわかるかと存じます。このまんがは、思い込みや勘違いによるどたばたが4コマで表現されているので、クリシンを考える場合の導入に適切、というわけです。

Critical たとえば左は、第1章の「推論の仕方は妥当か」の中の一項目「経験者は正しい? 体験談論法」のページです。後輩OLの相談に、先輩のOLが体験に基づいてアドバイスする、というまんがのあと、体験談を論拠とすることについて見開きで解説されています。つまりこの項目の場合、まんがは、導入に使われているというわけです。
本書は全般にまんがを導入に使っているケースが多いですが、補足や補強の意味で、項目の最後に使われているケースも結構ありました。

「クリティカル」とは、一般に「批判的」などと訳されますから、クリシンはそのまま訳せば「批判的思考」です。けれども、これではなんだか攻撃的な考え方のようなイメージになってしまいます。著者の道田さんたちは、そうしたイメージになることをなるべく避けながら、クリシンに触れられるよう、まんがを使われたのだと思いました。そしてそれは、かなりの部分成功していると思います。少なくとも私はずいぶん楽しく読むことができましたし、クリシンについて基本的なところを知ることができました。

1999年に発行された本書ですが、私が購入したのは、2008年発行の第9刷。かなり売れているようです。本書の企画に当たっては、著作権処理とか、版元との調整とか、編集者も大変苦労されたのではないかと思いますが、これだけ売れれば苦労も報われたというものでしょうhappy01
考え方を考えるための入門書として、お勧めできる一冊です。

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コメント

はじめまして。数年前のエントリーへのコメントで申し訳ありませんが,拙著をご紹介くださり,ありがとうございます。

そのお礼というわけではありませんが,新しく出る拙著(クリシン本)を献本させていただけないでしょうか(残念ながらマンガ付きの本ではありませんが……)。別に,書評で取り上げることを強要するわけではありません。どうされるかは内容をご覧になって判断いただければと思います。
よろしければメールにてご連絡ください。

投稿: 道田 | 2012年5月16日 (水) 22時02分

これは、著者の先生から私の駄文にコメントを頂戴して恐縮に存じます。また、献本との由、心から感謝いたします。

投稿: 村岡明 | 2012年5月17日 (木) 00時18分

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