« 教師の作法 指導 | トップページ | サヨナラ、学校化社会 »

2010年1月22日 (金)

逃げの一手

100歳詩集 逃げの一手」まど・みちお:著(小学館)

まどさんが100歳を迎えたというニュースは、11月、新聞で知りました。しかも新しい詩集を出したとのこと。こりゃあ、買わねばならぬと思いはしたものの、近所の書店にはなく、無精な私は、つい先だってまで出会えずにおりました。
それが、このたびようやく読める僥倖に浴したというわけです。

一読してみて、その力強さに打たれました。詩作も表現行為ですから、力強いのは当然なのですが、どうも「100歳」ということに対して先入観を抱いてしまいます。人間老いると、しかも100歳ともなれば、どんなにか穏やかになるだろうかと。

先入観の原因のもう一つは、本書のタイトルです。「逃げの一手」この「逃げ」という言葉からは、あまり力強さは感じません。それに、いったい何から逃げるのでしょうか。これについては、詩集の最後に、まどさんの言葉が掲載されています。

山川草木、すべての中には、いのちがあります。木でも草でも何でもそうです。その中の、人間は一匹に過ぎないんです。私は、この中で「逃げの一手」を貫いてきたことになると思うんです。詩の中に逃げること、臆病な自分から逃げることでもあります。(中略)逃げることによって逆に生まれることにもなります。言葉っていうのは、いつも必ずそうなんですから。とにかく簡単なものじゃないから。

逃げることによって言葉が生まれる」というのは、正直分かるような分からないような気持ちです。それでもこの文をかみしめながら、もう一度本書を読んだ時、「逃げ」というのは、時代や世間の流れに逆らわないというか、積極的にコミットしないということのような気がしました。

最後に本書の中で、私が最も気になった一編をご紹介しましょう。「よくこの頃」という詩です。

よく
この頃
死刑判決
ということ
おやりになる
おおっぴらに…
裁判官なるお方から
あぁ考えられん
この耄碌めは
天を仰いで
あおいで
ひとり
ただ
なみだ
するだけ
俺が殺した
百万の命への
おとむらい…を
せめてもの思いで

|

« 教師の作法 指導 | トップページ | サヨナラ、学校化社会 »

小説・文学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29188/47324724

この記事へのトラックバック一覧です: 逃げの一手:

« 教師の作法 指導 | トップページ | サヨナラ、学校化社会 »