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2010年1月15日 (金)

思い込みについて思う

「思い込みについて思う──最近の雑誌記事から」

人についての思い込み」という本を読んでから、自分の思い込みについて意識するようになりました。以来、折に触れて自分の思い込みの激しさに驚かされていますweep

さて、今週読んだ雑誌の中で、自分の思い込みに気づかされた記事が2つありました。

Sushi一つは、週刊文春の人気コラム「ホリイのずんずん調査」(堀井憲一郎)です。このコラムのウリは、徹底した実地主義。堀井さんとそのスタッフが、毎回何でもずんずん実際に調べて紹介しています。
今回のテーマは「寿司の数え方」。正確には先週からこの話題で、実は2週にわたって、一般に普及している「1カン、2カン」という数え方のルーツを探ります。まず、先週のコラムでは昔からの雑誌を総当たりし、どうやら90年代くらいにこの助数詞が定着したという結論を導き出します。その結果と、堀井さんが詳しい江戸時代の文献を元に、一見伝統的な呼び方に思える「1カン、2カン」が、「実は由緒も謂われもない」呼び方であることを明らかにしています。
つまらない記事とお思いの方もいらっしゃるでしょう。それでも私は、私は堀井さんが寿司の数え方に着眼できた、疑問を持てたことが素晴らしいと思いました。こうした視点は、なかなか持てるものではありません。私たちは、根拠が希薄なことであっても、権威のある人に言われたり、メディアで報じられたりすると、つい「昔からそういうことになっている」と思い込んでしまうからです。

Chusha_2 もう一つは、日経ビジネスの巻末コラム「有訓無訓」です。今週は、小児科医の毛利子来(もうりたねき)さんの言葉。毛利さんは、子育てなどの本も多数書いておられる有名小児科医です。
今回の記事のタイトルは「過剰な医療、過剰な投薬が人間本来の免疫力を弱める」。毛利さんは冒頭次のようなことを書いています。

近代文明の基本的な欠点はやり過ぎです。オゾン層を破壊したり、温暖化になるのは、生産活動の過剰が原因。医療も過剰なのに、聖域になっているのはおかしい。(中略)あのタミフルにしても、日本が世界の消費の約8割というのは異常です。

何事も過ぎたるは及ばざるがごとしといいますが、改めて説明いただくと、なるほどなあと思います。新型インフルエンザが大流行しているときは、やれワクチンだ、タミフルだ、と大騒ぎしていました。私も報道に煽られて「薬やワクチンが無くなるのはまずいぞ」と、本気で思っていました。けれども、細菌やウイルスに負けない体を作ればよいのだと毛利さんは言います。

小児科医はほとんどインフルエンザウイルスを持っています。子供が目の前でくしゃみをするからうつされるのです。でも発病しない。これを不顕性感染と言います。検査で鼻やのどを調べると陽性が出るが何ともない。(中略)病気やウイルス、病原菌と人間の関係について、もう一度、医者も含めて考え直す時期に来ていると思います。

ほとんどの小児科医が陽性」という記述には少なからず驚かされました。「感染=発病」ではない、というのも目から鱗です。「体に悪いものは排除しなければならない」と思い込んでいたら、こうした発想にはならないだろうと思いました。毛利さんのような考え方は、医学界では少数派だそうです。多数派の人と、医学的知識基盤は同じはずなのに、毛利さんたちは正反対の医療方針を導き出し、実践しているという事実に、少し感動しました。

おそらく、堀井さんや毛利さんの意見に反対する専門家もいらっしゃるでしょう。けれど、多様な意見が出るのは健全な社会です。こうした世間と真反対の視点をもらえるのは、雑誌ならではの良さだと思いました。私もこういう発想ができたらなあと痛感するこのごろです。

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