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2010年1月20日 (水)

教師の作法 指導

「教師の作法 指導」野口芳宏:著(さくら社)

一読して、本書は以前ご紹介した「授業の作法」の続編と思いました。著者が同じで、説明の仕方がよく似ており、タイトルも似ているから、というのもありますが、それだけではありません。本書の冒頭、教育界でよく使われながらも、曖昧に使われている3つの言葉、「授業」「指導」「教育」について、野口さんは次のように定義しているからです。

学力を形成するのが「授業」、目標へ導くのが「指導」、人格を育てるのが「教育」
似ているようで異なる三つの言葉と概念。まずこれをきちんと整理しておきましょう。現実に即した身近な概念のレベルから言うと「授業<指導<教育」という順番になります。

前作の「授業の作法」では、「授業」という行為における作法が解説されていました。野口さんの定義に従えば、「授業」は、知識や業を伝授し学力を形成する行為ですから、スキルさえあれば、教師でない私たちにも行うことができます。しかし「指導」は、目標へと導く行為だそうですから、「指導の作法」は、それを行う場面や人、組織によって変わってくるはずです。それゆえ本書は、「教師の作法 指導」というタイトルになったのだと想像しました。この想像に従えば、次回作は「教師の作法 教育」となるはずですが、どうでしょうかcoldsweats01

さて、本書の項目は原則2見開きで構成されており、各項目の末尾には、野口さんが黒板Kansatsu へ書いた文字が掲載されています。この文字は、その項目をまとめていたり象徴していたりする言葉です。その言葉が、左の写真のように、黒板にチョークで書かれています。おそらく相当大きな文字で書かれたのではないでしょうか。
書について素人の私が申し上げるのも僭越ですが、力強い中にも優しさの見える文字であるように感じます。一画、一画に隙がありません。
私は当初、「チョークでこれだけの字が書けるのだから、毛筆はさぞかし──」と思いました。けれども、本書を読み進めるうちに、「黒板にチョークで書いたからこそ、こうした強い字になったのではないか」と思い直しました。この文字を見ていると、まるで野口さんの授業を受けているような気持ちになります。
各項目Honshitsuで述べられた内容を、こうした端的な言葉で示してもらうだけでも参考になるのに、こうした手書きの文字として示されれば、教師としての意志というか矜持が伝わってきます。誠に巧みな編集です。

では、実際どのような言葉が示されているのか、本書第二章「指導の作法」の目次に沿って、その一部をご紹介します。茶色が各項目タイトル、青色で示した文字が、手書き文字の内容です。

  1. 学ぶ楽しさを教える──学ぶ
  2. 学習ルールをしつける──大事な小事
  3. 予想外の出来事に対応する──正々堂々
  4. 変容を褒める──褒める
  5. 原理原則で叱る──叱咤激励
  6. 子どもの心を見る──観察
  7. 正対正視して話す──対峙
  8. 評価的に聞く──傾聴
  9. …(以下略)

5の「原理原則で叱る」が、「叱咤激励」のように、述べられている中身が想像できるものもあれば、そうでないものもあります。しかし一読すればどれも納得の一言でした。

とはいえ、教師でない私の場合、本書で取り上げられた内容は、理解すればそれで終わりです。けれども、先生方は、理解した上でさらに実践しなければなりません。これは、たやすいことではないでしょう。野口さんの手書き文字は、そうした先生方への激励の意味もあるのかなあと思いました。
いずれにせよ、現役の先生であれば、経験年数にかかわらずお読みになって損のない本だと思います。傍らに置き、折に触れて読む、そんな本ではないでしょうか。

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