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2010年2月 1日 (月)

さよならが、いえなくて

夜回り先生【特別編】 さよならが言えなくて」水谷修:原作/土田世紀:漫画(IKKI COMIX)

夜回り先生こと水谷修さんのことは、様々な著作やマスコミ等で知っていましたが、「夜回り先生」という漫画になっていることは知りませんでした。しかもマンガ家は、私の好きな土田世紀さんです。
「夜回り先生」は、小学館の月刊IKKIに連載されていた漫画で、全9巻。Wikipediaによれば、内容は単行本の「夜回り先生」とほぼ同じとのことだったので、今回はその特別編を読んでみることにしました。

本書は実話を元にした漫画と、その登場人物による対談とで構成されています。漫画と対談の間に、対談の扉とも言うべき見開きページがあり、そこの文章が、本書の紹介文として適切なのでご紹介しましょう。

本書に描かれた漫画のモデルは実在する。一方はもちろん、”夜回り先生”こと水谷修氏であるが、もう一人は、作中と同じ「ジュン」と言う名を持つ女性である。
漫画は、行き詰まるクスリとの闘いの末、水谷氏とジュンが初めて出会うシーンで終わるが、現実の二人を巡る物語は、その後もさらなるうねりを描きつつ現在も続いている。二人の出会いからちょうど10年目を迎える2009年4月某日、水谷氏は、今もジュンが暮らすA市に、彼女を訪ねた。

夜回り先生とジュンが漫画の最後に出会う、というのは、ちょっと理解しにくいですよね。主人公の二人なのに。
実は二人はメールと電話だけでやりとりするだけの関係なのです。寂しさからクスリに手を染めてしまったジュンは、水谷先生にケータイで救いを求め、立ち直ろうとするのですが、なかなかうまくゆきません。その間のさまざまなやりとりは、おそらく事実ではなく、次のようなことを知らせたいために創作されたものでしょう。

  • なぜ薬物に手を染めるのか、なぜエスカレートするのか
  • 薬物の何が怖いのか、なぜ止められないのか
  • 薬物使用が発覚すると、どのような捜査機関がどのように関わるのか

つまり本書は、薬物に関する入門書となっているわけです。私も初めて知ったことがずいぶんありました。

たいていの物語には、結末がありますが、本書の場合、終わりがありません。漫画の後の対談では、その後ジュンの妹もクスリに手を出してしまったこと、ジュンの更正を支援していたお医者さんが自殺してしまったことなど、衝撃的な話が次々となされます。
そして何よりショックなのは、ジュン自身の「正直クスリをやりたい気持ちは今でもある」と言う言葉です。漫画と違い、こちらは実話であるだけに、やりきれない気持ちになります。しかし、これが現実なのでしょう。

最後に対談での水谷さんの言葉を紹介します。

薬物の怖さっていうのは、一度クスリを使ってしまったら、もう二度と普通の生き方はできんのだよ。もう一度使いたいという気持ちと、一生戦い続けなければならない。ジュンは、闘いを続けていかない限り、クスリを止めることができない。さよならはいえない。「さよならが──」という本のタイトル。これ、僕にさよならが言えなくて、僕がさよならが言えなくて…だけではなく、”薬物にもさよならが言えない”って意味があるわけ。

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