« 解説に感動 | トップページ | からだが変わる体幹ウォーキング »

2010年2月10日 (水)

使ってもらえる広告

「使ってもらえる広告 『見てもらえない時代』の効くコミュニケーション」須田和博:著(アスキー新書)

近ごろは、さまざまな価値変化が急激に起こっています。パソコンの世界では、従来からこうした「急激な変化」が常識でしたが、今は社会の多方面で同時に発生しているようです。実際、このごろ発売される本のほとんどは、「変化」がキーワードになっているのではないでしょうか。

本書も広告の「変化」がテーマです。のっけから、次のような衝撃的な書き出しで始まります。

広告ってホントに必要なのかな……。
こんな疑問を抱くのは、実は業界外のみなさんだけじゃない。(中略)広告業界関係者たちの中にも、ひそかに「もしかして…」なんて思っている人はたくさんいる。みんな大っぴらに口にできないだけだ。

自分が担っている仕事が、実は社会的に必要とされていないのではないか、というか不安は、多くの方がお持ちではないでしょうか。先日ご紹介した過激な本では、「不安」は「現実」であり、大量解雇が始まると書かれていました。私自身、年々存在感が薄れているソフトウエア稼業、しかもプログラミングではなく企画担当ですので、そうした不安と日々格闘しています。

本書は、博報堂のクリエイティブディレクターである須田さんが考えた、広告の未来についての本です。須田さんは「広告の不必要性」と闘いながら、ひとつの確信にたどりつきます。

やっぱ、広告はみなさんのお役に立てるものだってば!

「見せる」ものから「使える」広告へ、「役に立たせる」ではなく「お役に立てる」という視点・スタンスが大事なのだ──こうした考えに至る経緯が、本書には詳しく書かれた本です。この具体例として、最近須田さんが手がけた「mixi年賀状」が紹介されています。本書のタイトル「使ってもらえる広告」というのは、まさにこのことでしょう。

「広告の未来なんて、関係ないや」と思わないでください。須田さんが「広告の不必要性」という現状認識に立って、「使ってもらえる広告」という考え方をひねり出した過程は、まさに今、私たちに突きつけられている「自らの仕事の不必要性」と闘うための海図もしくは羅針盤と言えるのではないかと思うのです。語られるポイントは、以下の通り。

  • 生活が個別化してきて、従来のように同じ広告を大量にばらまく、というスタイルが通用しなくなってきた
  • テレビは相変わらず視聴されているものの、その見方はずいぶん違ってきた
  • 既存メディアとWebサイトでは、それを視聴する人の「傾き度合い」が違う
  • 広告の不易と流行

ネタバレになりますから、あえて詳しくは書きませんでしたが、なかなか面白い視点だなあと思いました。テレビとネットの違いについての言及は、発信者側と受け取る側それぞれについて書かれている点で、非常に参考になりました。
「不易と流行」と書いたのは、広告で変えて良いことと変えてはいけないことについて書いていると言うことです。須田さんがこれまでの人生で学んできた師匠(会社の先輩・大学の先生)に学んだことから、何を学び、今に何が生きているのか、ということについて、とても謙虚に書いています。こういう自己認識があるからこそ、大きな仕事ができるのでしょう。広告業界の方というと、どうも尊大なイメージがありますが、それは良い意味で裏切られました。

何につけても、「○○のおかげで、今の自分がある」という認識は、とても大切ではないかと思います。内田さんの構造主義によれば、現在の「自分」は、過去の受け売りの集大成みたいなものに過ぎないのですから。

時代の切り取り方と着想の視点について、参考になった一冊でした。

|

« 解説に感動 | トップページ | からだが変わる体幹ウォーキング »

ビジネス書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29188/47427898

この記事へのトラックバック一覧です: 使ってもらえる広告:

« 解説に感動 | トップページ | からだが変わる体幹ウォーキング »