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2010年2月 9日 (火)

解説に感動

Kaisetsu

「日本の教師に伝えたいこと」の解説に感動

昨日のご紹介記事で、書ききれなかった大切なことがあります。それは、この文庫版にだけ収録されている「解説」です。以前ご紹介した「教えることの復権」を書いた苅谷剛彦さんが執筆されています。この文章がすばらしかったので、取り立ててご紹介したくなりました。

文庫本の解説には、作品を分かりやすく説明したものから、感想を述べたもの、背景を説明したもの、著者との関係を述べたものなど、様々なパターンがあります。本書の解説の場合は、説明を中心としながらも、苅谷さんの研究成果を補強材料にして、大村さんの主張の価値を再定義しています。この中身をもう少しふくらませれば、書籍として成り立ちうる内容です。

冒頭苅谷さんは、次のように本書を端的に紹介しています。

この本は、98歳でなくなる直前まで「教えるということ」に生涯を捧げた国語教師、大村はまさんの、1990年代の講演をまとめたものです。教師たちを目の前に大村さんが語った言葉だけに、ここには教師という仕事への具体的で厳しい指摘があふれています。

たった2文で、本書の位置づけと大村さんの業績と生涯を紹介しきっています。この説明ならば、たとえ大村さんをご存じない方が読んでも、その人となりを理解できることでしょう。誠に見事な紹介文です。

この紹介に続き、ご自身の研究調査の経験から、「教育現場は今、「生きる力」に代表される新しい学力と、ドリル学習に代表される「旧学力」の二分法的発想にとらわれているようにみえる」とした上で、大村さんの「教えるということ」について次のように解説しています。

大村先生のいう「教えるということ」は、手放しに子どもの主体的な学びに寄りかかるものでも、紋切り型のやり方で目に見える「基礎学力」をつけさせる方法でもありません。本書の随所に書かれているように、教師が入念な準備をした上で、確実に身につけさせなければならない基礎の部分を、授業の工夫を通じて教える。その教えるということが、子どもの学びを誘い出すのであって、最初から子どもの学びに寄りかかるのでも、頭ごなしに教師が主導するのでもない方法です。

この部分、一見すると、一文は長いですし、最初と最後が意味的に重複しているため、悪文と思われるかもしれません。しかしおそらくこれは、意図的でしょう。大村さんの教授哲学の最も大切な部分を説明するために、大村さんがよく使う「大切なことは何度も繰り返し述べる」というレトリックを用いたのだろうと思われます。なかなか心憎い演出です。

そして最後は、教育社会学者らしく、年々厳しさを増している学校や先生の環境を紹介しながら、それでもなお、教えることを学校の中心に置こうではないか、と訴えます。そしてその中心が、解説の結びの言葉です。大変印象的なので、ここにご紹介します。

本当に残念なことですが、大村はま先生は、今はこの世にいません。でも、先生が「日本の教師に伝えたいこと」として残した言葉の数々は、教育という仕事への使命感に裏打ちされた厳しい注文であり、今の教師、これからの教師たちへの励ましのメッセージだと思います。私もひとりの大学教師として、伝えられたことを自分なりにかみしめ、また次の世代につなげていけたらと願っています。厳しさの中に、やりがいを見出す人たちをどれだけ教育の世界に引きつけられるか。この本は、そこに至る道しるべでもあります。

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