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2010年4月23日 (金)

国語のできる子どもを育てる

「国語のできる子どもを育てる」工藤順一:著( 講談社現代新書)

以前テレビ番組で、本書の著者、工藤さんの主催する学習塾「国語専科教室」の様子を見たことがあります。塾なのに、国語しか教えないというスタイルもユニークなら、教え方もユニークでした。「ただ本を読むだけ」とか、「漫画を読んで作文を書く」とか。

番組では、教え方については軽く触れられていただけでしたから、常々もっと詳しく知りたいと思っていたとき、本書を知りました。なんと、直球のタイトルでしょう。帯の文章もふるっています。
はっきり国語力がつく

とはいえ、国語力とは一体どんな力なのでしょうか。この疑問は、国語教科書を編集していたとき、いつも頭の中に澱のように沈んでいました。これに関わって、工藤さんは「はじめに」の中で、次のように書いています。

学校時代はすぐに終わり、テストに悩まされたり、だれかに勉強しろと言われたりすることもなくなりますが、それからが本当にことばを使って生きる、テストでは内実人生の本番です。その時に使うことばの質が、その人の人生とその世界の質を決めていくことになるでしょう。

確かに私たちは、国語の力というと、つい国語のテストで良い点を取る力と考えがちです。しかしおっしゃる通り、国語のテストがある学校時代などすぐに終わってしまい、「どう考え、いかに伝えるか」という課題に日々苦闘する毎日となります。だからこそ、工藤さんは単に受験を乗り越えるのではない国語塾を経営されているのでしょう。私にはとても合点が行く説明でした。

このように、国語の力を「よりよき人生を過ごすためのことばの質」と定義した上で、本書では、文章の書かせ方、読ませ方について具体的に解説がなされています。具体的な指導法については本書をご確認いただくとして、工藤さんの考え方が示された部分をいくつかご紹介しましょう。

  • 作文指導のマニュアルに、日記を付けることが奨励されているが、大きな間違い。毎日の同じような生活の中に視点の違いを見つけ出して書くことは、書くことの上級者にしかできない高度な作業。
  • 作文指導の問題は評価基準が明確にされないこと。作文は正解のない課題であるだけに、作文の評価基準は、内容と関係なく表現の質を判断する客観的基準としてもっと詳細に明示されるべき。
  • 読解の選択肢問題の場合、まったく本文を読まずに正解にたどり着くことはいくらでもある。それが証拠に、子どもたちは「できた」ではなく「あたった」と言う。
  • テストとは本来学力を測る物差し。しかしそのテスト対策が行き過ぎると、身につくのは対応能力であり国語力ではない。これでは目的と手段が逆転している。

このように本書では、作文と読解の学習を一体的に扱っています。中には少々難解で理解しにくい説明もありましたが、おおむね「なかなかうまい説明をするなあ」という印象です。国語の指導に関する疑問や課題は、本書である程度解決するのではないでしょうか。

私が本書でもっともユニークと感じたのは、入試問題の評価の観点です。麻布中学校の入試問題を引用しながら、「設問同士が有機的に関連しており、問題を解いて行くことが文章の読解につながっている良問」と解説されています。それゆえ麻布中学校では、保護者説明会の際「塾へ行っても無意味。それより読書を」と言うのだそうです。なるほどなと思いました。
同時に、「最近の若い社員は」などと愚痴をこぼす企業は、麻布中学校の爪の垢を煎じて飲む必要があるなと感じました。つまり、必要な人材像があるなら、それに応じた問題を作ればいいのです。もし若い人に問題があるなら、それは入社試験を作成したあなた方の問題なのです。

「国語力」についてだけでなく、さまざまなことについて考えさせられた一冊でした。

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コメント

はじめましてこんにちは(^-^)
その教室に子どを通わせています。
この本を読んでいいな~と思ったんだけど・・本に書いてあるほどは効果は出ていません(><)
本好き、読解力、思考力、論理的、論文スラスラ~って魅力的なこと満載ダケド・・・結局、スポーツや他勉強と同じで、子どもの資質が一番、親を含めた環境が二番。週に1回やってぐんぐん効果が出るほど画期的なモノなんて無いんだな~ってのが実感です。
さすが、国語で食べている人だけあって、うまいこと言うな~と思いました。
夫には本に書いてある事が全部事実だと思うほうが幼い。本と実は違うのが常識!なんていわれてしまいました。
通りがかりですが・・・参考まで。

投稿: ぶう | 2010年7月 9日 (金) 15時28分

ぶうさん、コメントありがとうございました。
そうでしたか、実際に通われましたか。ご意見、とても興味深く読ませていただきました。

私自身、このブログは文章を書くための勉強のために書いているので、取り組みの効果がなかなか出ない、ということはよく分かります。ですから、仮に効果がまったく見えなかったとしても、取り組み自体が無意味、と言うことではないと思います。

この本は、工藤さんの教育法の効果、ということとは別にして、国語教育の枠組みを一般にも分かるように示したという点が価値なのだろうと思っています。
その意味でぶうさんが、子どもの資質と親の環境を挙げておられるのは、その通りなのかもしれないなと感じました。
ありがとうございました。

投稿: むらちゃん | 2010年7月 9日 (金) 21時11分

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