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2010年5月23日 (日)

ボーイズラブ小説の書き方

「ボーイズラブ小説の書き方 『萌え』の伝え方、教えます。」花丸編集部:編集(白泉社)

以前ご紹介した「電子書籍の衝撃」を読んで以降、私たちと書籍のつきあい方の今後について、とても気になるようになりました。まもなく発売されるというiPadも、その大きなポイントになるでしょう。
少し前に「IT革命」という言葉が喧伝されました。当時の私は、「革命とは大げさな」と思ったものです。けれども、少なくとも出版業界においては、天地をひっくり返すような大革命が起こりはじめているのではないでしょうか。それを実感させてくれたのがこの本です。

いや、ボーイズラブ(BL)小説が書きたくなって購入したわけではありませんcoldsweats01。ここ数年文章生成に関わるソフトウエアについて考えているので、書店に行くとそれに関わる本はいつもチェックしています。本書を見つけたとき、いったんはスルーしたのですが、参考になりそうなポイントがいくつかあり、結局購入しました。ポイントは以下の3点です。

  • 登場人物の名前やペンネームに関して表記分析がなされている
  • 投稿者が陥りやすいミスを具体例で示し、対処法を説明している
  • 「すぐに役立つ文章編集ソフトCD-ROM付」であった

正直3番目の「CD-ROMつき」というのに最も惹かれました。本書の解説では表記分析や語彙分析がよくなされていましたから、てっきりそれを下敷きにした「BL小説用エディター」が収録されていると思ったのです。
これは結局、私の勘違いでしたがweep、ハウツー本としては、全体として良くできているなと思いました。文例は豊富で具体的ですし、よく使われる漢字などのデータ、説明を補足するためのマンガやコラム、関係者の対談も配置されています。これで1500円というのは良心的だと思いました。さらに、「小説を書くなら一太郎」と書いているところも秀逸ですfuji

ところが、本書のネットでの評判がまったく芳しくありません。「説明が高飛車すぎる」「矛盾だらけ」「書きたい意欲を減退させる」などなど。私が元編集者なので、つい花丸編集部寄りの考えになってしまうことを差し引いても、こうした批判のオンパレードには、かなり違和感がありました。

そこで思い出したのが、「電子書籍の衝撃」の「ケータイ小説は、コンテンツではなくコンテキスト」という項目。そこでは次のように解説されていました。

ケータイ小説というのは従来のいわゆる「文学」「小説」といったコンテンツとは異なって、読者と書き手の双方をくるんだ共有空間のようなものを生み出すためのシステムと呼んでもいいでしょう。つまり自分とその共有空間がつながるための装置として、ベタなリアリティが存在しているというわけです。(中略)
だとすればケータイ小説というのはコンテンツではなく、コンテキスト(文脈)なのかもしれません。

ケータイ小説とBL小説を同一視してしまうのは少し乱暴かもしれません。しかし「読者と書き手の双方をくるんだ共有空間のようなもの」は、同じように存在すると思います。花丸編集部は、この空間が共有できていなかったのでしょう。いや、本書の発売は2004年ですから、当時はそうした空間がなかったのかもしれません。いずれにしても、読者と編集者の意識の乖離があるのは事実です。それが、ネットという増幅装置によって、一気に広がったという印象があります。
送り手と受け手の乖離は、何も出版界だけではなく、至る所で見られます。これはマーケティングというより顧客認識の問題、つまり「同一消費性向のマスが存在する」という、過去の現状認識から抜け出ていないことが最大の原因でしょう。

いまや顧客の嗜好は細分化しています。BLは特に細分化が激しい分野だと聞きます。これから確実に構築されるであろう「電子書籍業界」においては、細分化された顧客との共有空間をいかに構築するかがカギになるのでしょう。BL小説指南本のおかげで、電子書籍について一歩具体的に考えることができました。

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