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2010年5月28日 (金)

「買いたい!」のスイッチを押す方法

「『買いたい!』のスイッチを押す方法 ──消費者の心と行動を読み解く」小阪裕司:著(角川oneテーマ21)

「不況だからものが売れない」「モノ余りの時代、もはや欲しいものなどない」などとよく言われます。確かに百貨店やスーパーは、売上が前年割れのところが少なくないですから、半分は当たっているのでしょう。けれども、一方で着実に売上を伸ばしているメーカーや販売店があるのも事実です。

著者の小阪さんは、「これまでの多くのビジネス現場では、人が買い物をする行動のメカニズムに目が向けられてこなかった」ことが問題なのだと言います。人が買い物をするときには、ある一定のメカニズムが働いているというのです。

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今回ばかりは、記事の冒頭を読んだだけで「あ、こんな胡散臭そうな本の紹介なら、読まなくていいや」と思われる方が少なくないと思いました。実際、私も書店で本書を手に取ったときは、ほとんど買う気がなく、目次を見るためだけでした。けれども、冒頭の「はじめに」の中に、こんな一節がありました。

本書で語られるビジネス現場での実践事例のほとんどは、私がさまざまな企業とともに、実際に本書の考えに基づいて行ってきたビジネス現場での出来事である。これらは「起こった出来事を解説した」のではなく、われわれが「計画して起こした出来事」だ。この点は重要なので覚えておいて欲しい。なぜならわれわれは、計画的に引き起こすことが出来る点に重きを置いているからだ。

確かにこれまでのマーケティングの本は、「起こった出来事を解説した」ものがほとんどです。それはそれで価値があるとは思うものの、取り上げられた事例を一般化するのが難しいという点で問題がありました。その点本書の事例は、「計画して起こした」というのですから、まず一般化しておいて事例に落とす、という従来と逆のプロセスをとっているわけです。これは参考にならないわけがない、というわけで読んでみることにしました。

本書の帯に「マーケティング理論と脳科学の進歩で分かった、「買いたくなる仕組み」の作り方を明かす!」と書いてある通り、小阪さんは北米の神経科学会にて「神経経済学」の分野で発表を行う数少ない日本人の一人だそうです。それゆえ本書の説明も、経済学と脳科学の両方の視点でなされています。「脳ブームの迷信」にも書かれていた「脳神経細胞は増える」という最新の研究結果も、ちゃんとフォローされていました。とはいえ、こうした科学的っぽい説明がされているからと言って、盲目的に信じてしまうのは戒めなければなりませんが。

私が本書から学んだことは以下の2点。

  1. 現代の消費行動は、having・doingからbeingに変化している
  2. 購買行動を細かく洗い出し、キーとなる行動を抽出し対策することが重要

小阪さんによれば、beingとは「自分で大好きだと思える『私』にどうしたらなれるか」であるとのこと。これはつまり「その商品を買うことが自分の生き方にどうかかわるか」ということでしょう。本書にはそれを裏付ける事例がいくつか紹介されていました。それ以上に思い当たったのが、日本でブランド品の売上が落ちているというニュース。日本の消費者の心理が、単に持ちたいという欲求から、それによってどんな生活を送りたいかという欲求へシフトしてきていることを如実に物語る事実です。
それから2番目については、「購買行動デザイン」「キー・ビヘイビアの発見」「感性情報デザイン」という3つのアクションで説明されています。これは、消費者が店頭に入ってから出るまでの行動を細かく分析し、そこから「買う」に直接つながる行為(キー・ビヘイビア)を選び出し、そこに至る方策をデ ザインするという方法論です。これはマーケティングにかかわらず、部署運営や部下指導など、様々な仕事に応用できる考え方だと思いました。詳しくは本書をお読みいただければと思います。

「行動分析ならやってるよ」という人も少なくないと思いますが、本書で示されているのはかなり細かいレベルです。たとえば本書で例示されている「サインペンで字を書く」という行為さえ7つに分解されています。これは、自分でやるとなると難しいなと思いました。さらにそこからキー・ビヘイビアを抜き出すとなると…。
従来のマーケティング本よりすぐに役立つのでは? と本書を読み始めたものの、結局、マーケティングに王道はないと言うことがわかりました。最適施策を導き出すために、事例分析を行うのか、行動分析を行うかの差ですから。とはいえ、逆の視点を得たことはメリットでした。類書を複数読むことのメリットを感じた一冊でした。

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