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2010年5月 7日 (金)

告白

「告白」湊かなえ:著(双葉文庫)

本書は出版後、さまざまな書評で取り上げられ、本屋大賞を受賞するなどずいぶん話題になった本です。それが、つい先だってようやく文庫化されました。
早速購入しようと書店で手に取り、奥付を見てビックリしました。
 2010年4月11日 第1刷発行
 2010年4月16日 第3刷発行

たった5日で第3刷sign03 いやはや、ものすごい売れ行きの本です。

まずは本書の表4(裏表紙)に書かれているあらすじをご紹介しましょう。

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!<特別収録>中島哲也監督インタビュー『「告白」映画化によせて』。

「教師の娘が、自身が受け持っているクラスの生徒に殺害される」という設定だけでも驚きなのに、その事実を、冒頭その教師自身の独白によって明らかにする、という構成にショックを受けました。
さらにその教師の語り口も。「娘は生徒に殺された」という衝撃的な事実を語るにしては、あまりに冷静、もっと言えば他人事のようなのです。とても被害者の母の言葉とは思えません。それだけに、空恐ろしい世界へ一気に引き込まれてしまいました。同時に、なぜこうしたショッキングな出来事を、その「犯人」も含まれている教室で独白せねばならなかったのか? そもそも、生徒に殺されたというのは事実なのか? という疑問が次々に頭の中に浮かんできます。まさに「つかみはOK」の冒頭なのです。

上記のあらすじにあるように、冒頭の教師に続き、「級友」「犯人」「犯人の家族」らがそれぞれこの事件を語ります。この独白のリレーともいうべき構成は、とてもおもしろいと思いましたし、この事件の全体像を理解しながら、同時にその後の出来事も織り込んで行くためには、とても有効だと思いました。
さらに独白者のそれぞれが、それぞれの視点で語ることで、登場人物同士の意識のずれ、認識の違いが際立っていったように思います。同じ事象でも、人によってはこうも違って見えるのかと思い知らされました。
とはいえ、独白というのはある種会話文ですから、当然そこには個性が反映されるわけで、そこにリアリティを与えるにはかなりの筆の力が必要となります。その点では若干課題があるのではないかなと私には感じられました。

本書の帯には、「2010年6月5日全国ロードショー」と書いてあり、この帯自体が映画の割引券になる旨の記述がありました。その上本書巻末にはこの映画の監督へのインタビューが掲載されています。全体として「映画のパブリシティ本」になってしまっている感じがして、「だったらもっと安くしろよ」と思わぬでもありませんangry
しかし内容としては、評判になっただけのことはあり、確かに一読の価値のあるミステリーだと思いました。湊さんの次回作にも期待したいと思います。

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コメント

振替休業日にシネコンで「のだめカンタービレ最終章」を見たとき予告編の松たか子につられて、隣接している書店で文庫本を購入しました。300ページ程を2時間ぐらいで一気に読み切りました。むらちゃんの解説どおり独白の連続という形が新鮮でした。内容的には、救いようのないラストで読後感はもう一つでしたが、6月5日の映画の封切りを楽しみにしている自分がいました。

投稿: wadc | 2010年5月11日 (火) 05時53分

wadcさん、コメントありがとうございました。
そうですか、予告編をご覧になりましたか。松たか子さんのキャスティングはどう思われますか。
私はちょっと違うのではないかと思いましたが。

投稿: むらちゃん | 2010年5月11日 (火) 09時08分

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