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2010年5月31日 (月)

情報モラルの授業

コミュニケーション力が育つ 情報モラルの授業」赤堀侃司:監修/三宅貴久子・稲垣忠・情報モラル授業研究会:共著(ジャストシステム)

新しい学習指導要領に、情報モラルの指導を行うことが明記されてから、指導資料が官民あわせてたくさん発行されてきました。そのほとんどは、教材もしくは指導案(実践事例)だったように思います。これらは「すぐに指導を開始する」という意味では大きな役割を果たしたのではないでしょうか。

ただ一方で、限界も見えてきました。「べからず集」では身につきませんし、コミュニケーション意識に目を向けさせないと「メールやチャットの書き方指南」になってしまいます。その問題に一つの提案をしたのが本書です。

まずは、「情報モラル教育」の目的。本書では、これを「コミュニケーション力や考える力を育てる」と定義し、その体系を示しています。つまり、情報活用のノウハウを伝授する授業ではなく、学力を育てる授業と考えているわけです。この視点は新鮮でした。確かにこれまでの「情報モラル教育」は弥縫策の印象もあり、学力との関係が曖昧な部分があったような気もします。
ではそうした「情報モラル教育」は、どのように進めればよいのか──本書では次のような構成で解説しています。

  1. 現状を知る
  2. 情報モラルの授業に必要なこと
  3. 情報モラルの授業の選び方
  4. コミュニケーション力が育つ情報モラルの授業 【モデル授業案】
  5. コミュニケーション力が育つ情報モラルの授業 【実践例】
  6. 情報モラルの授業の効果について
  7. 資料編

ご覧の通り「調査」→「構想」→「立案」→「実施」→「評価」という、まるでマーケティング本のような構成です。
まず「調査」の段階では、きっずgooでの全国調査の結果と、本書に協力した実践校の調査結果がそれぞれ掲載されています。実践校を農村と都会から抽出していることと、保護者と子どもそれぞれに調査しているのが参考になるのではないでしょうか。
つぎに「構想」の部分。授業における「話し合いの場の設定」、「保護者に考えてもらう場の設定」など、授業を構想する骨格を示しています。その上で授業のねらいを「コミュニケーション力と考える力の育成」とした理由を次のように書いています。

情報モラルの授業は、他の授業同様「こうすればうまくゆく」という答えはない。ただ情報技術が格段に進歩している中、イベント的授業や、知識伝達的授業ではまずいということだけははっきりしている。知識はすぐに陳腐化するからだ。だから、状況に応じて正しく判断し、コミュニケーションできる力を育成することを、情報モラル教育の中心に据えるのである。

じゃあ、具体的にどうするの? ということで、実践事例が紹介されています。授業案と実践報告が、章を分けて書かれているので、実際に授業をしてみようと考える先生にとってはとても分かりやすいのではないかと思いました。

そして本書を最も特徴付けているのが、「評価」にあたる「情報モラルの授業の効果について」の章でしょう。今回の授業の調査から実施まで丁寧で適切な考察が付けられています。この章のまとめ部分から少し引用してみます。

授業実践の前後を比較した結果、児童の利用状況や、保護者の基本的な考え方に大きな変容はなかったが、いつの段階から携帯電話の使用を認めるか、具体的に考え始めた傾向を確認することができた。また、学校で情報モラルを指導する必要性に関しては、8割の保護者が何らかの形で指導を期待する一方、授業で学んだことを過程に持ち帰り、現実の問題として考えていくまでの距離をどう埋めるかが、課題として残された。

教育活動の評価を記載する場合、その成果を中心にしたくなるはずですが、ここでは今後への課題が中心となっています。これは勇気のある編集だと思いました。そしておそらく、この方が、実際にやろうとする場合には参考になることでしょう。
情報モラルの授業だけでなく、教育活動を構想する上で、とても参考になる一冊ではないかと思いました。

追記:
実は本書の構想をしたのは私です。しかし事情により授業が始まってまもなく、このプロジェクトから離れることになりました。後を任された方々には大変迷惑を掛けてしまい申し訳なく思っています。同時に、このようなすばらしい本に仕上げてくれた、著者の先生方、編集のRさんには感謝の言葉もありません。この記事を持ってお礼の言葉とさせてください。ありがとうございました。

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コメント

他人に迷惑をかけたケジメはちゃんとつけたんでしょうね?

部長という立場を悪用し、嫌がらせ行為に興じていた
というのがあなたの実態ではなかったのか?
指導などと称して、無礼極まりない言動に繰り返していたのではなかったか?
怒り狂うように去っていった人間もいたのではなかったか?
違ったか?

それをモラル的にどうだと思う?
いまさらながら問うてみたいくらいだわ。

まさかとは思いますが、自分だけは治外法権なんて
ふざけた発想はないですよね。

「情報モラル」を問うてみるのも結構です、
それなり考えがおありだろう思いますが
信憑性をまるで感じません。残念なことに。


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個人の運営するブログへのコメントとして不適切、
かつ突如土足で家にあがりこむような内容で申し訳ないが、
どうしても聞いてみたくなったので書いてみた。
消してもらって構わない。

投稿: 向かいの億万長者 | 2010年6月 5日 (土) 01時21分

向かいの億万長者さん、どうやら私個人に対して深い不快感をお持ちのようですね。しかし、ここはあくまで本に対する意見を個人的に述べている場であり会社とは無関係です。

それでもこのコメントを掲載させていただいたのは、「情報モラル」について、貴殿のような誤解をしている方が少なくないからです。「情報モラル教育」とは、情報の適切な活用を身につけるための教育です。知識や倫理性を身につける学習ではありません。知っていることを、実際の行動や態度に反映させなければなりません。そういう点では道徳に近い部分もあります。

けれども行動変容を促すというのは、なかなか難しいことです。それゆえ私たちは、疑似体験を設定する方法を本書で提案しています。
ここで今一度、貴殿が書き込んだ、私に対する中傷文読み直してください。これで気持ちが晴れましたか? 私という人間がいかに非道か、伝えられましたか。こういう書き込みの体験を、小学生に校内LANで体験させて、実感してもらう、これを疑似体験と呼んでいます。

貴殿がこの「学習」を通じて、ネットとの適切なつきあい方を学んだことを期待します。
以後このような記事と無関係のコメントはすべて削除させていただきます。

投稿: むらちゃん | 2010年6月 5日 (土) 11時27分

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