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2010年6月11日 (金)

2011年新聞・テレビ消滅

「2011年新聞・テレビ消滅」佐々木俊尚:著(文春新書)

当初書店で本書を目にしたときは、「またいつものメディア批判本だろう」くらいにしか思いませんでした。新聞の記者クラブ取材、テレビの電波利権、といった話なら十分分かっているし、もうたくさんだと思ったわけです。

ところが先日「電子書籍の衝撃」という本を読んで、考えが変わりました。佐々木さんの本は、もう少し読んだ方が良さそうだぞ、と。案の定、本書はメディア界に起きつつある、あるいはこれから起こるであろう、巨大な変化を明確に示してくれた本でした。

本書の帯に、でかでかと「ビジネスモデルは崩壊した」とあるように、新聞・テレビ消滅の理由を佐々木さんは「徹底的に構造的な問題」であり、「決して報道や番組の質が低下するからではない」と書いています。その構造的な問題として次の2点を挙げています。

第1に、マスメディアの「マス」が消滅し始めていること
第2に、メディアのプラットフォーム化が進んでいること

「マスの消滅」の根拠として、昭和の時代には頻繁に存在した国民的ヒットがなくなってきているというのが佐々木さんの主張です。さらにマスメディアの代表者による「マス消滅論への反論」を引用し、その否定という形で持論を展開します。
これが事実とすれば、これまでメディアを支えていた、広告料収入がなくなるということですから、確かに「消滅」するでしょう。けれども、大筋同意できるものの、若干疑問も残りました。なぜなら、マスが本当にないのであれば、数年前の小泉旋風やフリースブーム、昨夏の民主党圧勝などの説明が出来ません。

一方、もう一つの「メディアのプラットフォーム化」については、非常によく分かりました。Googleの及川氏が提唱したという、メディアの三層構造「コンテンツ・コンテナ・コンベヤ」を使って説明しています。コンテンツとは、情報の中身、コンテナとはそれを入れる容器、コンベヤとはそれを運ぶシステムのことです。この考え方で、最近音楽業界に起こった変化を説明するとこうなります。

従来 現在
コンテンツ 楽曲 楽曲
コンテナ メジャーレーベルの製造したCD iTunes Store
コンベヤ CD販売店 インターネット

これはもう、誰もが認める変化です。今後変化があるとすれば、コンテナ部分だけでしょう。そして「コンテンツを届ける」という機能に着目すれば、新聞も音楽と同じモデルに置き換えられます。

従来 これから
コンテンツ 新聞記事 新聞記事
コンテナ 新聞紙面 Yahoo!ニュース、検索エンジン
だれかのブログ、2ちゃんねる
コンベヤ 新聞販売店 インターネット

情報の作成から配信まで、一手に担っていた新聞社が、インターネットの登場によって、記事作成の機能しか持たなくなるというわけです。これを防ぐには、自社の記事をインターネットには一切アップしないことしかありません。しかしそれが現実的でないことは誰の目にも明かです。佐々木さんはさらに、新聞記事有料化もうまく行かないだろうと述べていて、それも説得力がありました。
新聞に続いて、同様のモデルで、テレビ消滅の構造も明らかにしながら、新聞、テレビ、レコード会社生き残りの道を提案しています。

本書の主張は、なるほどなあと思う一方で、あまりに巨大な変化なので、全面的に受け入れることは難しいなあと思っていたら、日経ビジネス誌(2010.5.31号)に気になる記事がありました。アメリカの投資家として有名な、ウォーレン・バフェット氏が「ニューヨークタイムズ紙は、お気に入りの新聞の一つだが、経営的には大変厳しいことになってしまった。今後投資はあり得ない」と述べていたのです。本書でも言及されていましたが、NYタイムズ紙が、早晩立ちゆかなくなるというのは、どうも事実なのでしょう。

思えば教科書も、編集から配本まで、新聞同様垂直統合されていた業界でした。これが電子化されたとき、同様の変化が起こることは想像に難くありません。どうやら私たちは、インターネットがもたらすであろう、ドラスティックな変化の渦に巻き込まれ始めているようです。

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