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2010年6月14日 (月)

チーム・バチスタの栄光(上)

「チーム・バチスタの栄光(上)」海堂尊:著(宝島社文庫)

海堂さんは現役の医者でありながら、人気作家として数多くの作品を上梓しています。しかも本作は、デビュー作にして「このミステリーがすごい」大賞を受賞したということで注目していました。けれども上下巻に分かれているため、これまでずっと購入をためらってきました。ただでさえ「積ん読」の本が増えているのですから。
それでも、先日神田の古書店街に専門書を売りに行った際、ワゴンセールで売られていた本作を見つけ、上下巻同時に購入しました。例によって、表4記載のあらすじからご紹介しましょう。

東城大学医学部付属病院の“チーム・バチスタ”は心臓移植の代替手術であるバチスタ手術専門の天才外科チーム。ところが原因不明の連続術中死が発生。高階病院長は万年講師で不定愁訴外来の田口医師に内部調査を依頼する。医療過誤死か殺人か。田口の聞き取り調査が始まった。第4回『このミス』大賞受賞、一気にベストセラー入りした話題のメディカル・エンターテインメントが待望の文庫化。

本作は、ミステリーの文学賞を受賞したのですから、「メディカル・ミステリー」と紹介されても良さそうなのに、ここでは「メディカル・エンターテインメント」となっています。これは、主人公である田口医師(田口公平)に調査依頼がされた時点では、事件なのか事故なのかが、上巻の時点では判然としないからでしょう。「ミステリー」と言ってしまうと、どうしても「殺人」と結びついてしまいますから、なかなかうまい表現です。
この大きな「問題」に加え、もう一つ、「違和感」が提示されます。それは、「天才外科チーム」の調査を、なぜ「万年講師」である心療内科医(田口)が担当するのか、命じた高階病院長の意図は何か、ということです。しかも、病院にはそうした問題を調査する専門機関「リスクマネジメント委員会」があるのですから。

この「問題」と「違和感」は、それぞれ途中解決したように見えて、またぶりかえす、といった形を取ります。ですから読者は、通常のミステリーのように「犯人は誰だろう」とか「犯行はどう露見するのか」といったどきどき感ではなく、いわば「もやもや感」で読み進めることになるのです。さらに舞台は、大学病院という、一般人にはなじみのない場所。なかなかうまい引きつけ方だと思いました。

そして田口医師による関係者へのヒアリングは、病院の人間関係を明らかにしながら、事件の謎に迫ります。加えて迫真の手術シーン。これら田口医師の視点で描き出される関係者とのやりとりや、バチスタ手術の場面は、ディテールの細かさと会話のリアリティがあり、さすが現役のお医者さんだと思いました。

けれども物語が最高潮に達したとき、上巻は次のような田口の言葉で終わります。

この後、俺に未曾有の災厄と福音が同時に襲来するのだが、俺はまだ、そのことを知る由もなかった。(下巻に続く)

ううむ、ずるい。
ですが、私もそのやり方に便乗してみることにしました。sun
次回記事に続く

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