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2010年7月30日 (金)

宇宙のみなしご

「宇宙のみなしご」森絵都:著(角川文庫)

先日書店で「お、森さんの新刊が出ている」と思って手に取りました。文庫ですから、「単行本はいつ刊行されていたのかな」と思って、最終ページを見てみると、次のように書いてありました。

本書は1994年11月に講談社(単行本)から、2006年6月に理論社(フォア文庫)から刊行されたものに加筆修正し、文庫化したものです。原文の年号は漢数字

加筆修正してまで文庫化するとは、きっとすばらしい作品に違いない、と思って購入しました。結果的に、それはまったく正しい判断でした。

中学2年生の陽子と1つ歳下の弟リン。両親が仕事で忙しく、いつも2人で自己流の遊びを生み出してきた。新しく見つけたとっておきの遊びは、真夜中に近所の家に忍び込んで屋根にのぼること。リンと同じ陸上部の七瀬さんも加わり、ある夜3人で屋根にいたところ、クラスのいじめられっ子、キオスクにその様子を見られてしまう……。第33回野間児童文芸新人賞、第42回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞の青春物語。

以上が表4に書かれたあらすじです。率直に申し上げると、ちょっと陳腐に感じました。大切なところが書けていないように感じるのです。そこで僭越ながら、私なりに書き直してみました。

中学2年の陽子と1歳下の弟リンは仲良し姉弟。昔は自己流の遊びを生み出していたが、中学生になった今では疎遠気味。互いに悩みを抱えるようになったある日、陽子は「真夜中に近所の家の屋根に登る」という遊びを思いつく。この姉弟の遊びに、リンと同じ陸上部の七瀬さん、陽子のクラスのいじめられっ子、キオスクが加わり、4人で近所の屋根をめざすのだが……。

若干文字数が増えてしまい、少々ネタバレ部分もあったりしますが、お許し下さい。修正のポイントとして、まず本書は青春小説なので、若者の悩みについて言及しないわけには行かないと思うのです。次に「屋根登り」遊びの位置づけ。大人から見ると、まったく楽しくなさそうですし、おそらく普通の中学生にとっても「とっておきの遊び」などでは無いはずです。小学生の遊びでしょう、真夜中であることを除いては。
ではなぜ、彼らは屋根に登ったのか、なぜ4人で登らなければならなかったのか、それがどんな結果をもたらし、彼らはそれをどう受け止めるのか、これが本書のポイントです。こうしてあらすじだけ書いてみると、突拍子もないお話しなのですが、森さんの筆にかかると、俄然真実味を帯びてきます。

そして4人が屋根の上で語り合う、ラストシーン。それぞれに悩み、傷ついた4人が新たな一歩を踏み出そうとする、すがすがしくも力強い場面です。タイトルになっている「宇宙のみなしご」という言葉も、ここで使われています。読み終えたとき、なんともあたたかい、穏やかな気持ちになることができました。
「森さん、いいお話しをありがとう」本書は、森さんから少年少女たちへの励ましのメッセージなのでしょうけれど、中年のおじさんである私も励まされたような気がして、ついこんなことばを口にしてしまいました。悩んだり、傷ついたりしたことのあるあなたに、ぜひおすすめしたい一冊です。

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