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2010年8月11日 (水)

アイシールド21(後編)

「アイシールド21 (1)~(37)」村田雄介:画/稲垣理一郎:作(ジャンプコミックス)

このマンガで描かれているのが思い入れの強いスポーツであることと、37巻一気読みした興奮から、書き出したら止まらなくなってしまい、まとまらない文章になってしまいました。しかもだらだらと長くなりすみません。

前回は本作の特徴として以下の3つを挙げ、そのうちの「1」を説明したところで終わりとさせていただきました。今回はその続きからご説明いたします。

  1. 一般になじみのないアメリカンフットボールという競技の解説手法(説明済)
  2. 登場人物のキャラ設定の妥当性とリアリティ
  3. ストーリー全体を貫く骨格と哲学

「2」の特徴について。本作のテーマは、「友情」「努力」「勝利」ですから、登場人物は、それを具現化する特徴を持っていなければなりません。まず「勝利」を支える特徴として、主にアメリカンフットボールの競技上の能力が分かりやすく描かれています。「スピードはないが並外れたパワーがある選手」「身長や体重はないが敏捷性に優れた選手」「他の能力は並だがボールをキャッチするセンスに優れた選手」などなど。アメリカンフットボールが、ポジションごとに求められる資質が大きく異なるという特徴を持っているということも、作者たちがこのマイナー競技を選んだ理由の一つなのかなと思いました。
ただ、そうしたキャラクターをそろえただけでは、平板な物語になってしまいます。そこでこのマンガでは、そうした各自の特徴の裏に、それぞれが抱えるコンプレックスとその克服の物語を描いています。これは、思春期にスポーツに真剣に取り組んだ方なら誰しも思い当たることでしょう。「身長が低い」「スピードがない」「そもそも才能がない」外から見たら、「そんなことないよ」と思うような事柄が、本人にとっては重大な欠点なのです。それは泥門高校のメンバーはもちろん、対戦校のメンバーも同じ。彼らは、猛練習やチームメイトの助け、つまり「努力」と「友情」によってコンプレックスを克服して行きます。物語やキャラクターの繰り出す技は荒唐無稽ですが、こうした気持ちの部分には、十分なリアリティがありました。おそらく中高生も似たような気持ちで読むことができるのではないでしょうか。

最後に「3」について。当初私がこのマンガのタイトルを聞いたとき「なぜ?」と思いました。アイシールドとは、ヘルメットのフェイスマスク(金網部分)に取り付ける、強化プラスチック製の板で、視野を確保しながら目を守る装具です。装具名がタイトルになっていることに、少なからず違和感を覚えました。
けれども読み終わった今、このタイトルは実に秀逸だったと感じます。ネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、この言葉が物語を貫く背骨のような役割を果たしています。おかげで、途中わくわくしながら読むことができました。

東京の地方予選から始まるこの物語の舞台は、最後に世界へと広がります。世界戦を描いたことについては、ファンの間でも賛否あるようですが、私には必然の流れであるように感じました。その理由は日本大学フェニックス(アメリカンフットボール部)。おそらく原作者の稲垣さんは、同チームを取材したはずで、そのオマージュの意味で「世界と戦う日本チーム」を描く必要があったと想像しました。
本作に登場する「ドラゴンフライ」は、日本大学の篠竹監督(当時)が編み出した、和製ショットガンフォーメーションの一つです。1980年代に日本フットボール界で猛威をふるいました。篠竹監督は、このフォーメーションと戦術を駆使して、本気でアメリカに勝とうとしていたそうです。
こんな経緯があったので、終盤物語が世界選手権に突入して行くとき、「そんなばかな(笑)」と思いつつも、「やっぱりね」と感じました。特に最後の場面ではそう感じます。まったく個人的で勝手な想像ではありますが、当たらずとも遠からず、といったところではないでしょうか。

アメリカンフットボールは、足が遅かったり力が弱かったりしても、努力次第でこなせるポジションが必ずあります。それゆえ学校教育向きということで、アメリカではその簡易版というべき「フラッグフットボール」や「タッチフットボール」が学校体育に採り入れられているそうです。日本でも、採用している学校が増えてきていると聞きます。

早いもので来月には、アメリカでNFLが開幕し、日本でもリーグ戦が始まる季節となりました。このマンガをきっかけに、この素晴らしいスポーツが日本で少しでもメジャーになる日が来ることを願ってやみません。

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