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2010年8月 9日 (月)

アイシールド21

「アイシールド21 (1)~(37)」村田雄介:画/稲垣理一郎:作(ジャンプコミックス)

このまんがは、アメリカンフットボールに取り組む高校生を描いた作品です。週刊少年ジャンプ連載→テレビアニメ化という流れで、中高生を中心に大きな人気を博しました。学生から社会人までアメリカンフットボールをやっていた私にとっては、この競技が日本では非常にマイナーであることから、ずっと気になる作品でした。
最近古書店に出向いた際、全37巻のセットが8,000円程度で販売されていたため即買いしました。マンガとはいえ、37巻一気読みはかなり骨でしたが、とても満足の行く作品でした。

泥門(でいもん)高校1年・小早川瀬那(こばやかわ せな)。小さな体躯と気弱な性格が災いし、幼い頃よりパシリ扱いを受けてきた。だが実はズバ抜けた俊足の持ち主。ただその才能は、危機に陥ったときにしか発揮されない。
パシリ生活を変えようと、アメフト部に主務として入部した瀬那。しかし この部は、瀬那を入れても部員3人の超弱小チームだった。先輩のヒル魔(ひるま)により、「アイシールド21」という妙な名前を与えられ、無理矢理選手にされてしまう。

第1巻のあらすじを以上のようにまとめてみました。よくある学園もの、スポーツものとお感じになった方が多いことでしょう。実際、そうであるということもできます。けれども、この作品のポイントは、ストーリーにあるのではなく、瀬那や泥門高校の選手たち、対戦するライバルたちの成長、とりわけ心の成長にあります。
よく知られているように、週刊少年ジャンプ編集のキーワードは「友情」「努力」「勝利」。これらのすべてを愚直に、典型的に作品化したマンガと言えるでしょう。全巻を通じての基本ストーリーは、超弱小チーム、泥門デビルバッツは、努力と友情によって力を付けながら、秋季トーナメントで次々に襲いかかる強大な相手に「勝利」してゆく、というものです。少し詳しく書くとこんな具合。

  • 北アメリカの東海岸から西海岸まで、トラックを押しながら走って横断するという猛特訓をチーム全員で行い、地力を付ける
  • トーナメントでは、いつもぎりぎりで「勝利」。しかも次の試合は、さらにとんでもなく強い相手との対戦が待っている
  • 女子マネージャーやチアリーダーなど、女の子は登場するものの、恋愛とはまったく無縁。選手たち、特に主人公瀬那の成長を描くための脇役として登場するだけ

ご覧の通り、どれもスポーツマンガの典型。よく言えば「正当派のスポーツマンガ」、悪く言えば「古くさく、汗くさいマンガ」なのです。

それでも私は、このマンガはすばらしいと思いました。ポイントは、以下の3点です。

  1. 一般になじみのないアメリカンフットボールという競技の解説手法
  2. 登場人物のキャラ設定の妥当性とリアリティ
  3. ストーリー全体を貫く骨格と哲学

まず、1について。作者たちは、この典型的なスポーツマンガを描くに当たって、読者になじみの競技では苦しいと考えて、実はあまり詳しくないにもかかわらず、アメリカンフットボールを選んだのではないでしょうか。実際、細かい点ではこの競技への無理解が散見されます。けれども、そうした問題点が気にならないほど、その説明手法は見事だと思いました。ストーリーを展開しながら、この競技の基本要素を知らせるという離れ業をするために、「反則の省略」「フォーメーション=プレー(戦術)」という2つのデフォルメを用いています。
アメリカンフットボールは、比較的反則の多い競技ですが、このマンガでは反則が一切存在しません。それは、話を分かりやすくするためと、演出のために「実は反則」の技もOKにさせるためでしょう。有名野球マンガでも「実は不正投球」という必殺技があったように、主人公の努力や苦労を分かりやすく描くためには、必要なウソというのがあるのです。ウソが多すぎると読むのがつらい作品になってしまう危険性はあるものの、この作品ではウソと真のバランスがうまいと思いました。
また「フォーメーション=戦術」というのがなぜデフォルメなのか、を説明します。フォーメーションとはあくまで「隊形」、つまり選手の配置方法に過ぎません。そこから繰り出しやすいプレー(戦術)というのは存在するものの、本来は別のものです。にもかかわらず、このマンガでは「ショットガンフォーメーション=パスプレー」「ウイッシュボーンフォーメーション=トリプルオプション」というように単純化しています。これは「隊形=戦術」と割り切った方が圧倒的に分かりやすいからでしょう。知人を試合会場に連れて行って試合を解説する際、正確さを旨とするあまり、逆に説明を難しくしてしまうという愚を何度となく繰り返してきましたが、このやり方があったか、と感心してしまいました。

ああ、とんでもなく長くなってしまいましたので、続きは次回に書きます。

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