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2010年8月21日 (土)

模倣犯2・3

「模倣犯2」宮部みゆき:著(新潮文庫)
「模倣犯3」宮部みゆき:著(新潮文庫)

第2巻と第3巻は、本作品の「第二部」です。物語に登場する人物たちの顔見せ興行的な第1巻(第一部)を受けて、第二部は、第1部の終わりに死んだ、犯人と思われる2名の若者を中心として展開します。

彼らとその家族、さらに彼らの同級生が登場し、様々なエピソードによって、彼らの生い立ちや性格、ものの考え方などが細かく綴られてゆきます。第一部で起こった事件も、彼ら起こした側の視点で再度描かれている部分もありました。これによって読者は、実際に誰が犯人で、その犯行がどのような考え方や意識に基づいて行われたのかを、はっきりと知ることになります。

第2巻のあらすじ(表4から)

鞠子の遺体が発見されたのは、「犯人」がHBSテレビに通報したからだった。自らの犯行を誇るような異常な手口に、日本国中は騒然とする。墨東署では合同特捜本部を設置し、前科者リストを洗っていた。一方、ルポライターの前畑滋子は、右腕の第一発見者であり、家族を惨殺された過去を負う高校生・塚田真一を追い掛けはじめた──。事件は周囲の者たちを巻込みながら暗転していく。

第3巻のあらすじ(表4から)

群馬県の山道から練馬ナンバーの車が転落炎上。二人の若い男が死亡し、トランクから変死体が見つかった。死亡したのは、栗橋浩美と高井和明。二人は幼なじみだった。この若者たちが真犯人なのか、全国の注目が集まった。家宅捜索の結果、栗橋の部屋から右腕の欠けた遺骨が発見され、臨時ニュースは「容疑者判明」を伝えた──。だが、本当に「犯人」はこの二人で、事件は終結したのだろうか。

ミステリー小説のご紹介が非常に難しいのは、ネタバレにならないように配慮することです。この作品では各巻のあらすじに、それを痛切に感じました。
たとえば第2巻のあらすじに書かれている、「鞠子の遺体発見」や「「犯人」のHBSテレビ通報」「墨東署の動き」は、いずれも第1巻で明らかになっていることです。にもかかわらず、こう書かざるを得なかったのは、第2巻をそのまま紹介してしまうと、犯人が分かってしまうからででしょう。そしてもう一つの大切な事実も。

第3巻も同様です。あらすじに書かれた内容は、容疑者名を含め、すべて第1巻の最終場面ですでに明らかにされています。それでもこの「あらすじ」で妥当かなと思えるのは、第3巻が、「栗橋浩美と高井和明」の二人の乗った車が、なぜ「転落炎上」したのか、なぜ「トランクから変死体が見つかった」のかを彼らの側から描いているからです。

第二部では、犯罪者の心理や思考、行動を、非常に丹念に描いています。それゆえ、殺人などの犯罪シーンが描かれており、それがあまりにリアルなため、少々気分が悪くなります。しかしそんなどす黒い描写を見せられながらも、先を読まずにはいられないのがこの作品の特徴。
それは、登場人物の描写にリアリティというか、説得力があるからでしょう。犯罪者の家族、目撃者、被害者の視点からも犯罪者を描いている、ということもあるかと思います。犯罪者の心の闇に比較して、不釣り合いなほどさわやかな風貌、犯行前に豹変する姿など、実に説得力がありました。

しかし、読者は犯行の全貌(真相)を知っているにも関わらず、第二部では、警察も世間も「交通事故で死んだ二人が犯人」と結論づけようとしている、という焦燥感が残るような終わり方になっています。さらにわき上がってくるのは、本書の「模倣犯」というタイトルの謎。彼ら犯人たちは、どんな犯罪も模倣していません。それなのに、なぜこのタイトルなのでしょう。今後新たにこの事件を模倣した事件が発生することなのでしょうか? という疑問が深まるのです。

話の謎はもちろんですが、タイトルへの謎もどんどん深まってきました。ここまで来ると、もう読むのが止まりませんrun

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