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2010年9月10日 (金)

「分かりやすい教え方」の技術

「『分かりやすい教え方』の技術」藤沢晃治:著(講談社ブルーバックス)

藤沢さんの「分かりやすい~の技術」シリーズは、このブログでは「文章の技術」と「表現の技術」をご紹介しました。いずれも標題の通り「分かりやすい」本でした。その分かりやすさの秘密は、問いの立て方と分解の仕方にあります。藤沢さんは、元エンジニア。表現行為を分解し、そこからポイントや問題点を抜き出して解説して行く、というのが執筆スタイルです。この分解→解説の過程が、実に巧みだと思いました。

本書は、その手法を使って「教える」という行為を分解した本です。本書の執筆動機について、藤沢さんは「はじめに」で、次のように書いています。

(シリーズの執筆によって)「分かりやすく伝える技術」をテーマとした講演や研修の依頼も相次ぐようになりました。ところが、そうして私自身が「教える」立場に立ってみると、「分かりやすく教える」のは、「分かりやすく伝える」だけでは不十分だと気づかされました。そして、では「教える」ために、「分かりやすく伝える」以外に必要なことはなんだろう? と考え始めたのです。

この「伝えただけでは教えたことにならない」という指摘は、藤沢さんが講演や研修の中で実感されたことだけに、説得力がありました。さらにこのことを具体的に説明するために、奥さんの道案内で車を運転したときの経験を書いています。奥さんの案内があったときはすいすい行けた道が、後日独りで運転したときには大いに迷ったというのです。似たような経験は誰でも持っているでしょう。「教える」ということは、「説明の中身を脳に刻ませる」ことなのだなあと納得できます。

本書では、こうした教えることの基本原理を、「はじめに」から、第1章「その教え方はなぜ『分かりにくい』のか」、第2章「『教える』とはどういうことか」を通じて、解説した後、教え方の心構えと技術について説明しています。

「分かりやすく教える」五つの心構え

  1. 先生役を気楽に引き受けよ
  2. 生徒をお客様と思え
  3. 生徒の「文化」を尊重せよ
  4. 生徒を「可能性のタネ」と見よ
  5. 生徒を楽しませよ

「分かりやすく教える」八つの技術

  1. 生徒のレベルに合わせよ
  2. 「目標」を認識させよ
  3. 「魔の挫折地帯」を認識させよ
  4. 目標を分解せよ
  5. 「腹八分目」を守れ
  6. 褒めて伸ばせ
  7. 「反復」と「映像化」で脳に刻み込め
  8. 「与える」よりも「引き出せ」

こうしたリストだけ見ると、「そんなの分かっているよ」とか「なんのこっちゃ」というものばかりとお感じになるかもしれません。しかし、私はとかく曖昧になりがちな「教える」という行為について、まず「心構え」と「技術」に大別したことと、その構成要素をそれぞれ5つと8つに分解して説明していることに意味があると思っています。

むろん、学校の先生など教えることを生業にしている方にとっては、自明のことも多いでしょう。あるいは、違和感を感じる部分があるかもしれません。けれども、本書の解説を自明のことと捉えたり、批判したりすることも、「教える」という仕事を本当に理解するためには重要なことなのではないでしょうか。

教えることそのものを理解するというよりも、仕事を分解して捉え直すという点で非常に参考になった本でした。

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