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2010年9月 3日 (金)

きんこん土佐日記1

「きんこん土佐日記1」村岡マサヒロ:著(高知新聞社・ART NPO TACO)

出版の仕事というと、どうしても都会、特に東京に集中しがちです。以前ご紹介した「仙台、言葉の幸。」のように、地方にも良い本は多数あり、たまに東京の書店でそうしたフェアが開催されることはあるものの、あくまで一時的なもの。なかなか目にする機会はありません。そうでなくても出版点数が非常に多い昨今ですから。

本書は高知県で仕事をしている知人にいただいたのですが、一読してそのクオリティの高さに舌を巻きました。2004年から高知新聞で連載が始まったこのマンガは、現在も続いており、単行本はいまのところ全5巻。さらに第1巻である本書は、すでに第5刷とのこと。
まさに人気と実力を兼ね備えた作品だったのです。

この作品に登場するのは、主におじいちゃんとおばあちゃんと孫の3人。主人公と言ってもよいかもしれません。タイトルの「きんこん」とは、金婚式に由来するのではないかと想像しました。
本書の内容を想像いただくために、もくじに掲載されている紹介文を引用します。

よしき[おじいちゃん]
多趣味で、好きなことを突き詰めるタイプ。頑固な性格だが、孫にはとことん甘い。
くにえ[おばあちゃん]
熱しやすく冷めやすい。歳を取るにつれ天真爛漫な性格に磨きがかかってきた。土佐のはちきん。
たくみ
幼稚園に通う5歳児。共働きの両親が帰ってくるまで、祖父母の家で過ごしている。そのためか、たまに年寄り臭い行動をとる。

新聞マンガですから、本書に収録されている作品は基本的に4コママンガ。それぞれの作品のタイトルには「○月○日」と入っていますから、時事ネタ、季節ネタがふんだんに盛り込まれています。そしてなんといっても、魅力的なのが土佐弁のセリフ。これによって、上記の性格設定がリアリティをもって浮かび上がってくるのです。「がはは」と笑うような面白さではなく、「くすっ」と笑える、新聞マンガに適したクオリティに仕上がっています。

4コママンガを毎日描くだけでも大変なのに、多くの人が読む新聞に、一定のクオリティを維持しながら描くのは非常に困難なことです。新聞に掲載されるということは、下ネタが厳禁であることはもちろん、登場人物に反社会的行為をさせることはできません。特定企業の宣伝につながる表現もNGでしょうから、かなりの配慮が必要です。それでいて読者を笑わせなければならないのですから。もう6年も続けておられるというだけですばらしいと思いました。

本書のマンガを一部ご紹介しようかと思いましたが、いざ選ぶとなると迷ってしまいます。高知新聞社のサイトに「Web版きんこん土佐日記」がございますので、中身に興味のある方はぜひそちらをご覧下さい。毎週日曜日に更新されているようです。

新しい学習指導要領では、言語活動の充実が言われています。私は、その枠組みの中でぜひ方言を取り上げて欲しいと感じました。よそ行きの標準語で論理的な作文を書くのも重要ですが、「方言で表すことのメリット(特徴)」「方言でしか伝えられないこと」についても実感的に学んで欲しいものです。現在は5年生の国語で、ちょろっと扱うだけですから。
メディアからは標準語や奇妙な若者言葉が垂れ流されている今だからこそ、きちんと方言が使える子どもたちが増えて欲しいと思います。それには本書のように、方言(土佐弁)無しには成り立たない作品に触れることが重要だと思いました。
そうした、文化の継承という側面からも、作者の村岡さん、版元の高知新聞社には、今後とも頑張って欲しいと思います。

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