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2010年10月 4日 (月)

日経サイエンス(2010年11号)

「日経サイエンス2010年11月号」(日本経済新聞出版社)

この夏、相模原市(神奈川県)は、ちょっとした宇宙ブームでした。JAXA相模原キャンパスにて、小惑星イトカワから帰還した「はやぶさ」の公開があったからです。バブル崩壊以降、なんだかずっと元気がない日本にとって、技術力を世界に示すことのできた、久々に明るいニュースだったからでしょうか。

その「はやぶさ」だけでもすごいのに、実はそれに匹敵する取り組みが始まっていました。「はやぶさ」帰還の4日前、宇宙ヨット「イカロス」が宇宙で帆走を開始していたのです。風(空気)のない宇宙で「ヨット」しかも「帆走」とは、どういうことでしょうか。

本書の表紙になっている、写真の物体が「イカロス」です。なんだかヨットというより、凧のように見えます。比較対照するものがないので、どれくらいの大きさのものか、写真では見当もつきませんが、なんと1辺が14メートルもある、巨大な「帆」なのだとか。これがなぜ「宇宙ヨット」と呼ばれるのか、この記事の「キーコンセプト」を引用してご紹介します。

  • 太陽光を鏡のような膜で反射させて推進力を得る宇宙ヨットの研究開発が世界各国で進んでいる。日本が打ち上げた実験機「イカロス」は惑星感で帆の展開に成功、世界初の宇宙ヨットとなった。
  • 「イカロス」によって太陽光による推進や帆の制御などの技術が実証され、宇宙ヨットを将来の木星探査などに利用できる道が開けた。帆に付けた薄膜太陽電池で発電、その電力でイオンエンジンを駆動する構想もある。

なんだかにわかには信じられないことですが、「イカロス」は、太陽光が膜にぶつかる運動量(光圧)を推進力に変えて、金星を目指しているのだそうです。その光圧、1平方メートル当たり、0.0005gとのこと。地球上ではまったく意識できない力に過ぎませんが、宇宙ではこれがかなりの力なのだそうです。
とはいえ、それは理論上の話。実際に光圧をとらえて推進する宇宙ヨットは、今回の「イカロス」が初成功。これまでアメリカ、ロシア、日本が取り組んだものの、いずれも失敗してきた歴史があり、今回の成功は、そうした失敗の上に築かれたものだとか。なんとも示唆に富む話です。
この「イカロス」に関する記事は、ほかにも「へぇ~sign01」とうなってしまうような情報が多数紹介されていて、とても楽しく読めました。写真や図版も数多く、しかも美しく見やすく工夫されています。ただ、これは科学雑誌には不要な情報なのかもしれませんが、この宇宙ヨットになぜ「イカロス」と命名したのかを扱って欲しかったです。ギリシャ神話が元ネタだとすると、羽が太陽の光で溶けちゃったというエピソードは、正直あんまり縁起が良くないですからcoldsweats01

もう一つ気になった記事は、「半導体チップに潜むハッカー」。情報通信機器だけでなく、様々な家電製品や自動車などにも集積回路が組み込まれるようになった現在、それらに悪意のあるプログラムが潜り込む危険性が増しているのだといいます。パソコンのウイルスなどとちがい、工場の中でチップの中に仕込まれてしまうわけですから、ユーザーとしては対処のしようがありません。記事では、こうした危険性の存在と、そのメカニズム、対処方法などについて紹介しています。対処法の一つに、「セキュアIC」と呼ばれる回路を組み込むことが提案されていました。いろいろなことを考える人がいるのだなあと感動すると同時に、この仕組みは故障の際にも役立つのではないかと思いました。
便利になればなるほど危険性が増して行くという、なんとも皮肉な今という時代を反映した記事でした。

そのほか茂木健一郎さんの対談が、今回の号で終わりというのは少々残念でした。最近大量に発刊されている茂木さんの書籍には、「う~ん」と思う部分もありますが、この雑誌での対談は毎度ハイクオリティです。何より茂木さんも対談相手も楽しそう。次月からどうなるのか、期待したいところです。

日経サイエンスは、これまでも2010年7月号2009年7月号と紹介して参りました。毎号紹介したいくらいクオリティの高い雑誌です。授業の雑談ネタを仕入れるのには、非常に適した雑誌ではないでしょうか。

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