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2010年10月11日 (月)

受け継がれるもの

Met2

先日、学生時代に所属していたアメリカンフットボール部のOB会から、会報にエッセイを寄稿して欲しいとの依頼がありました。
チームは創部35年と、さほど歴史はないものの、草創期の話題はすでに忘れ去られています。そこでゴールポストの逸話から、連綿とつながるチームへの思いを文章にしてみました。後輩たちや若いOBたちに、そうした人の思いの流れを感じて欲しかったからです。うまく表せたかどうかは甚だ心許ない限りですが。

自分の備忘録もかねて、以下にその文章を掲載します。なお、OB会報では実名になっている個人名、大学名はすべて匿名とさせていただきました。

 S大学のグランドに常設されている、アメリカンフットボール専用のゴールポスト。これは実は2代目です。初代は関東連盟が特注して作ったジュラルミン製のものを譲り受けたものでした。何事も最初というのは軋轢があるもので、この設置については、一筋縄ではいかなかったのです。

 まずは連盟がS大学に提供する必然性です。連盟として高価な物品を、大学に常設する=寄付するのですから、その理由を、理事会はもちろん、加盟大学にきちんと説明する必要がありました。当時私は連盟の理事として末席におりましたが、そうした根回しができる権限も経験もありません。話が宙に浮きかけたとき、当時事務局長だったKさん(元T大学監督)が、理事会内の根回しと有力評議員への説明を手回し良く実施してくださり、連盟の正式な承認がもらえました。
 「これで設置できる」と思いきや、実は受け入れる大学側にも問題がありました。巨大なゴールポストをグラウンドに常設するには、国(当時の文部省)と大学の許可が必要とのこと。大学はともかく国の許可など、気の遠くなるような話です。せっかく連盟のOKが取れたのに、受け入れられない結果になったら、Kさんの顔をつぶすことにもなります。

困り果てて、当時チームの部長をしてくださっていた工学部のM教授に相談すると、「ぼくがなんとかするよ」とおっしゃって、すぐに状況を整えてくださいました。T大学の前例を出し、国から、陸上トラックの内側を「アメリカンフットボール専用グラウンド」とする承認を得て、大学には「必要不可欠なゴールポスト」と説明するというロジックを編み出したのです。前例とお上に弱い、役所の体質を巧みに利用した見事な交渉でした。
 こうして事務手続き上の問題はすべてクリアされましたが、もう一つ「どうやって運ぶか」という問題が残りました。しかし、これも元監督のTさん(4期)が会社のトラックを出してくれて、事なきを得ました。
 こうして、「アメリカンフットボール専用グラウンドに、ゴールポストはあって当然」というコンセンサスが醸成されました。おかげで初代が老朽化して使えなくなったとき、2代目のポストはすんなりと設置されたのです。

 このように長々と昔話を書きましたのは、一連の関係者が、いずれも「チームのため」「フットボールのため」といった利他的な意識で動いてくださったと言うことです。これは、チームスポーツにおいては、非常に重要な意識ではないでしょうか。
 一昨年、チームは2部との入れ替え戦でM大学と対戦しました。結果は残念でしたが、すでに勝敗の帰趨が決した第4Q、TDを1本返しました。これは勝敗上は無意味だったかもしれません。けれども私には、次年度のチームやメンバーの力になった1本に見えました。
 また昨年の最終戦。優勝決定戦であるJ大学戦に敗れた後でしたから、モチベーション維持に苦しんだことでしょう。実際立ち上がりは危ないシーンもありました。しかし結果は完勝。この結果をもたらした選手諸君の思いは、きっと今シーズンのチームの財産になっているはずです。

 学生スポーツの場合、卒業や入学で毎年構成メンバーが入れ替わりますから、毎年違うチームになっていると考えることも可能です。けれど、選手のシーズンへの思いや後輩へ託す思いというのは、受け継がれてゆくのではないでしょうか。チームカラーとは、そうした連綿とつながる思いの表れではないのかなと思うのです。

 まもなく始まる今季リーグ戦で、みなさんは一体何を受け継ぎ、受け渡すのでしょうか。チームの活躍を期待しております。

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