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2010年11月 3日 (水)

つげ義春コレクション 4~6

「つげ義春コレクション 4~6」つげ義春:著(ちくま文庫)

「つげ義春コレクション」は、全部で9巻あります。以前1~3巻をご紹介して以降、ずっと未読状態でした。「まんがなので、いつでも読める」と思っているうちに、ずいぶん時間が経ってしまったのです。

今回改めて4~6巻を読んでみると、おそらくつげさんしか描けないであろう独自の作品群に舌を巻くとともに、全集としての構成の妙にも感動しました。
以下にそれぞれのタイトルと、その表4(裏表紙)で紹介された概要、各巻の解説者をご紹介します。

  1. 近所の景色/無能の人
    • 表4:マンガ家として行き詰まった「私」は、中古カメラ業、古物業にも失敗し、多摩川で石屋を始める。売れないマンガ家の無為の日々を描いた連作“石屋シリーズ”『無能の人』など10篇を収録。
    • 解説:一条さゆり氏
  2. 紅い花/やなぎ屋主人
    • 表4:「紅い花」に始まる、つげ義春の“旅”。見知らぬ土地で出会う少女、飄々と生きる男たち。独特のユーモアに溢れる旅マンガの傑作12篇を収録。
    • 解説:早坂暁氏
  3. 苦節十年記/旅籠の思い出
    • 表4:つげ義春が、エッセイとイラストで描く、もう一つの世界。旅籠、街道、湯治場の風景や旅先で出会った人。貧乏旅行の顛末を綴った文章、自らの少年時代などを記した自伝的エッセイなどをセレクトした。つげ的世界の極致ともいうべき「夢日記」は、絵と文章のコラボレーション。さらにカラーイラストも付いた、ファン必携の1冊。
    • 解説:池内紀氏

4巻の表題作にもなっている「無能の人」は、映画にもなった有名作品です。東京と神奈川の境を流れる多摩川で石を売るという、荒唐無稽な設定で話題となりました。この作品だけでなく、4巻の作品に通底するのは「貧乏」です。それもとんでもない貧乏。
貧乏がテーマの作品というと、「惨め」「苦しみ」「嘆き」「怒り」といった感情が描かれるのが普通です。けれどもつげさんが描く主人公は、いつも貧乏から抜け出したいと思っているのに、そうした感情はあまり全面には出しません。いろいろとチャレンジはするものの、決して働き者というわけでもない主人公は、頼りない存在です。にもかかわらず、つげさんの筆にかかると、妙に魅力的な人物に見えてくるから不思議です。

5巻と6巻はセットで読むべきでしょう。いずれも旅がテーマです。5巻はマンガ、6巻はエッセイや日記など文章が中心で構成されています。それぞれ表現方法が違うにもかかわらず、読んでいるときの感覚といいましょうか、伝わってくる感じが同じなのです。文章を読んでいる感覚とマンガを読んでいるときの感覚が同一、というのは信じられないかもしれませんが、少なくとも私にはそう感じられました。5巻のマンガは、つげさんの体験に基づいて書かれているような雰囲気の、いわばエッセイマンガとでもいうようなものだからかもしれません。

なんだかとりとめもない紹介になってしまい申し訳ございません。間違いなく言えることは、全体にテンションが低めなのに心に残る、なぜか味わい深い、大人が楽しめるマンガ(作品)だと言うことです。マンガ好きの方にはぜひおすすめしたいコレクションです。

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