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2010年11月24日 (水)

教育の情報化と著作権教育

「教育の情報化と著作権教育」野中陽一:編著(三省堂)

本書は著者の方からお送りいただきました。このように先生方にのみ書かれた教育書は、購入するには少々気が重いので、ありがたい限りです。世の中の情報がどんどんデジタル化される現代では、著作権の知識が必要不可欠となりますから、その教え方について、かねがね興味を持っていましたので。

目次を見ると、「理論編」「実践編」「教材編」「資料編」となっていました。このうち「理論編」が、本書の約5割を占めています。理屈を十分に学ばないと教え方が理解できない、という編集方針と理解しました。確かに著作権は複雑な法律ですし、何度も改正されていますから妥当な構成だと思いました。

目次の直後が、もう第1章「教育の情報化と著作権教育」となっていることに少々驚きました。通常こうした本の場合、出版の経緯やねらい、意義などを記載した「はじめに」を置くことが多いからです。けれども、よく読んでみるとこの第1章が、「はじめに」的な役割を果たしていることがわかりました。

  • 平成20年の中教審答申において情報活用能力をはぐくむことが挙げられ、それが新しい学習指導要領に反映されたこと。
  • 新指導要領において、著作権教育は目標や内容が明確に定義されていないものの、国語や技術家庭科、音楽や美術にその関連項目が盛り込まれていること
  • 「教育の情報化」は、「情報教育」「教科指導におけるICT活用」「校務の情報化」の3つの要素からなっているが、そのそれぞれにおいて著作権の知識が必要になってくること
  • 著作権は、近年より生活に深く関わるようになっているため、カリキュラムの体系化を待つのではなく、1回でも良いから学校全体で取り組むことが重要であること

以上のようなポイントが示され、本書の各編各章においてそれが詳述されていることが書かれていました。教育の情報化に関しては、それまでの教育界ではあまり使われてこなかった用語が飛び交い、定義も曖昧であることからこうした押さえは確かに重要です。ほかに、知的財産教育との関係や、メディアリテラシーとの関係、情報モラルとの関係に言及されていました。

しかし正直もうしまして、以上のことを読み取るのが一苦労でした。これは著者と言うより、編集者の責任でしょう。
まず第1章が、本書をオーバービューする役割を担っているのなら、そのような見え方(デザイン)にする必要があります。読者もそういう気持で読めますから。それから、ここで取り上げられている項目は、必然的に網羅的になりますし、その項目と、本書内の各章との関係を記述する必要があるにもかかわらず、それが、図や表でなく文章で記述されているために、視認性が極めて悪いのです。
もし私が先生で、上司から本書を渡され「読んで勉強しておけよ」なんて言われたら、きっと読まないだろうなと思います。書籍の場合、書いてあることの良さだけでは読んでもらえるものではありません。三省堂の編集の方には、もう少しがんばって欲しかったなと思いました。

どうしても編集寄りの読み方をしてしまうので、批判が多くなってしまい申し訳ありません。けれども、内容は本当によいところが多いのです。たとえば私がもっとも面白いと思ったのは、理論編第9章の「著作権教育に関する教育委員会の対応」でした。小見出しをご紹介します。

  1. はじめに
  2. 教育委員会の実際
  3. なぜ教育委員会は腰が重いのか
  4. 教育委員会の腰を軽くするために
  5. 「学校における著作権教育アンケート調査」から見えるもの
  6. 教育委員会による著作権教育の取り組み
  7. おわりに ~風通しのよい職場づくりを呼びかける~

ご覧の通り、項目の構成としても内容としても、これだけで1冊の本になりそうです。この部分をお書きになった方は、教育委員会に実際に取材されたり、アンケートを行ったりして現状を正確に把握し、その上で対策を具体的に述べています。教育委員会とのつきあい方がよく分からない先生も少なくありませんから、こうした情報は非常に貴重なのではないでしょうか。

先生方にとっては、上から振ってくる○○教育に辟易する毎日とは思います。けれども著作権に関しては生活や、今後の日本の産業構造に直接関わってくる部分です。ここはひとつ、こうした書籍を参考にされるなどして、ぜひ行って欲しいなと思います。本書の著者、野中さんが述べているように、「1回でも」よいと思いますので。

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