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2010年11月15日 (月)

この世でいちばん大事な「カネ」の話

「この世でいちばん大事な「カネ」の話」西原理恵子:著(理論社)

本書はちょっと気になる本でした。それでも、サイバラさんの貧乏ネタは、もうずいぶん読んだ気がしていたので、読まなくてもいいかなと思っていました。今回読んでみようと思ったのは、「がんばれ理論社」フェアのおかげ。改めて読んでみて、敬遠してきた自分の不明を恥じました。本書は、かなり真面目な、そして本質的な生き方の指南本だったのです。

本書の表紙には、迫力ある西原さんの手書き文字が躍っています。それと同様、各章のタイトル、その下の小見出しに至るまで、迫力ある手書き文字で書(描?)かれています。その味が伝えきれず残念ですが、以下に章立てのみ引用します。

  • 第1章 どん底で息をし、どん底で眠っていた。「カネ」がないって、つまりはそういうことだった。
  • 第2章 自分で「カネ」を稼ぐということは、自由を手に入れるということだった。
  • 第3章 ギャンブル、為替、そして借金。「カネ」を失うことで見えてくるもの。
  • 第4章 自分探しの迷路は、「カネ」という視点を持てば、ぶっちぎれる。
  • 第5章 外に出て行くこと。「カネ」の向こう側へ行こうとすること。

なんともスゴイ言葉が並んだ目次ですcoldsweats01。こういう言葉選びは、数々の修羅場を経験した西原さんでなければできないでしょう。

第1章は、西原さんの子供時代の壮絶な貧乏を描きつつ、近所のやはり貧乏な人たちが、なぜ貧乏スパイラルともいうべき状況に陥ってしまうのかが繰り返し述べられていました。貧乏な状況に陥るのは、なにも怠け者だからではなく、社会構造や心(依存症)の問題だということがよく分かる説明でした。
次に第2章では、予備校→大学時代が語られます。幼少期~高校時代の話と分けて書かれているのは、ここで初めて「稼ぐ」ということを経験するからです。「稼ぐ前に、自分を客観的に知ることが大事」という指摘は、小学校高学年以上の子ならピンとくる例示で説明されていました。こういう説明は、人間観察を重ねてきた人しかできないだろうなと思います。

そして第3章。ここ以降が本書の中心と言ってもよいでしょう。抜群に面白くなります。とりあえずイラストで食べられるようになった西原さんが、ギャンブルにはまってまたどん底を見るという話が中心です。麻雀やFX投資、借金の話など、子どもはもちろん、大人でもほとんどなじみのない話なのに、それらに安易に手を出し失敗する心の働きを、巧みに説明していました。「人間は容易に引き返せない動物」という言葉も印象的でした。読みながら、私たちの幼少期の遊び、ビー玉やメンコって、ギャンブルの練習だったのかなあと考えました。

さらに第4章は、ずばり次のように書き出されています。

世の中の多くの人は、カネのハナシをしない。特に大人は子どもに「お金の話をするのははしたない、下品なことだ」と言って聞かせたりするよね。「カネについて口にするのははしたない」という教えも、ある意味、「金銭教育」だと思う。でも、子どもが小さいときからそういった「教え」を刷り込むことで、得をする誰かがいるんだろうか? いる、とわたしは思う。

その「得をする誰か」については、本書をお読みいただくとして、「お金を軸にして世の中を眺めてみると、いろんなことが見えてくる」という西原さんの主張は、一見乱暴ですが、筋が通っているように感じました。仕事を考えるときにも、やりたいことだけでなく、お金のことも考慮に入れ、その間の落としどころを考える、というアドバイスは、具体的だし妥当です。昨今よく言われる「キャリア教育」って、本当はこういう事なんじゃないでしょうか。

キャリア教育の資料として、様々な職業について解説した本が学校図書館に並んでいますが、職業は実際のところ体験してみないとわかりません。けれどもお金のことなら想像することはできます。そうやって事前にお金について考えることが、将来お金で躓かないためにとても大切なことなのだと西原さんは言います。

本書は装丁や中身がちょっとラジカルなので、学校図書館に導入するのは少々気が引けるかもしれません。それでも、お金や仕事について考えるのは大切なこと。みんなで読んで、話し合ってもらえたらいいなと思える本でした。

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