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2010年12月15日 (水)

続 見える学力、見えない学力

「続 見える学力、見えない学力 読み、書き、計算は学力の基礎」岸本裕史:著(大月書店)

本書は、タイトルの通り「見える学力、見えない学力」の続編です。前回の本は、改訂版とはいえ、書かれたのがずいぶん前でしたから、続編が出ていると知り、興味を持ちました。それぞれの主張は同じなのか違うのか。違うとすれば、どこが、なぜ違うのか、といったことを知りたかったのです。

結論から申しますと、内容は当然ながらほぼ変わりません。それどころか、さらに先鋭化していました。「はしがき」では、本書が刊行された2001年頃「学習内容の精選」で大いに話題となった、学習指導要領に代表される教育に対して激しくかみついています。

私は、この文教政策は、学力劣化政策そのものであり、子ども阿呆化政策であり、日本人を食欲・性欲・物欲の塊にしてしまう壮大な九割豚民化政策だと憂慮しています。日本の最高の宝は子どもです。未来の人材です。それがだめにされようという今、せめて親や祖父母が教わってきた程度の学力──世界一だった読み書き計算の能力は、これからの子どもにも、しっかりと身につけさせていきたい

「九割豚民化政策」とはまたものすごい言葉です(どう読むのかすら分かりません)coldsweats01。しかし小学校時代にきっちりと行うべき、計算や漢字の練習が、ほとんど行われなくなった現状に対する憂慮の念は、強烈に伝わってきました。
それゆえか、本書では、前著に比べて、学校での指導法や家庭教育のあり方についての記述が増えています。平行四辺形の面積の求め方のバリエーション資料など、具体的ですぐに使えそうな資料や、読者に、ワークシートへの記入を促すようなページもありました。読んで漫然と理解した気になるよりも、体験してもらえば指導法の必然性がわかる、という意図なのでしょう。教え方のプロらしい部分です。
ですから本書は、小学校の先生方はもちろん、学齢期のお子さんを持つ親御さんたちにも、きっと参考になることでしょう。

岸本さんが主張する学力についての考え方を端的に示したのが、次の文です。

読み書き計算という地味な勉強は、子どもが根気よく、粘り強く、勉強であれ、仕事であれ、やりつづけていく心性を育て上げていく効果的なすぐれた文化であり、学習なのです。

これが学者の意見だったとしたら、おそらく一顧だにされないことでしょう。しかし岸本さんには、たくさんの子どもたちを育てたゆるぎない実績があります。さらに、本書では、兵庫県山口小学校におられた(当時)陰山先生の事例も紹介されていました。これらは何よりの説得力です。

それから家庭教育に関する記事についても、前作と比べるて長めで、しかも具体的に書かれていました。またその章のタイトルも「怒母弱父から慈母快父へ!」「ふるさとの探検家養成」など、明快で印象に残るものがいくつもありました。私もあと10年早く本書を読んでいればと思います。

一方で、いくつか気になる点もありました。それはまず、漢字指導について説明した部分。「部首」という用語の使い方や漢字の成り立ちの説明が不正確なのです。たとえば「曜」の説明では、「ヨヨ」に見える部分は「羽」であり、その下は「隹(ふるとり)」である、と説明しています。しかし、六書の考え方に立てば、この部分は音符です。子どもから「曜日の曜なのに、なんで鳥なの?」「羽なのに、なんでヨと書くの?」と質問されたらどう答えるのでしょうか。
もっとも「子どもたちに漢字を覚えさせるのが目的であり、字義説明の正確さが犠牲になることもある」という考え方も理解できます。しかし、そうであればその旨きちんと記載すべきです。もっともそれは、編集部の責任であるかもしれませんが。

次に、説明上の問題。「部分=全体」あるいは「逆もまた真」という強引なロジックによる説明がよくあるのです。せっかく良いことが書かれているのに、この説明では説得力がありません。さらに学問的に怪しい事例の紹介も気になります。たとえば「テレビからは2万ボルトの放射線」という説明は、単位を間違えているか、説明を大幅にはしょっているかのどちらかです。そもそも出自があやしい言説ですが。
岸本さんが実践なさったことこそが、ゆるぎない説得力なのに、こうした部分が、結果として本書の信頼感を落としているように感じました。実に残念です。

後半はなんだか批判めいてしまい恐縮ですが、これも本書の価値を分かった上での感想とご理解ください。「学力」について考えるためには、間違いなく貴重な一冊です。

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