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2011年1月26日 (水)

こう考えればうまくいく。

「こう考えればうまくいく」日垣隆:著(文藝春秋)

日垣さんは、ずっと気になるライターでした。政治関係、法律関係、教育関係、メディア関係とかなり幅広い分野で本を書かれている上、大人向けだけでなく、子ども向け(ティーン向け)の本も書かれています。このブログでも、「学校がアホらしいキミへ」と「秘密とウソと報道」を紹介させていただきました。いずれも丹念な取材(資料集め)がなされていることがうかがえ、それを元にした独自の主張が印象的な本です。

それでも、てっきりマイナーなライターさんだと思い込んでいました。しかし、先日大手書店のレジ前に、本書が平積みされていて驚きました。しかも版元は文藝春秋社! 帯の文章は若干怪しげだったものの、「まえがき」には次のように書いてあり、読んでみようという気持ちになりました。

本書は、「働き方」、「情報力」、「予測力」という3つの大きなくくりから成り立っている。/上司や組織の言うなりに働いていたら、そのまま「大過なく」停年を迎えて膨大な退職金と再就職先と悠々自適の年金生活が待っている時代は、いつまで待ってももうやってこない。この全体傾向ははっきりしている。(中略)
本書は自己啓発の本ではない。/分析力、情報力、予測力、そして思考力を鍛錬する書物ではあるものの、それらが自己目的ではない。/自分の生活や仕事や人間関係を「自分が主人公となって、うまく操縦する」ためには、どのように考えればいいか、という筋道をまっすぐに述べた。

要するに「時代が大きく変わりつつある今、考え方を考えないと、この先まずいよ」というのが本書の主張です。

まず第1章「心もリッチになる働き方」について。「こうすれば、リッチな働き方ができますよ」という事が書いてあるわけではありません。働き方に関する考え方が書いてあります。なにしろ、本書のタイトルは「こう考えればうまくいく」ですから。
この中で面白かったのが、まず、IT技術が写真業界や出版業界のプロの首を絞めたということに関する考察。プロにとって受難の時代であるとしながらも、次のように述べています。

より正しく言えば、プロがアマに「殺されて」いるのではない。新しいプロがダイナミックに台頭し、工夫なきプロが自壊しているだけなのである。

専門技術を持ったプロであっても、安閑としていられない時代になったということでしょう。これは何も、写真家やライターに限ったことではなく、中小企業たとえば町工場においても「他では作れない製品が作れるかどうか」が鍵となる、と言います。これは、日垣さんが多数の向上を取材してきて導き出した結論だということで、説得力がありました。
そして何より、これらの原則は、すべての職業に当てはまることであり、「働く」ということをつきつめると「製品やサービスを買ってもらうこと」なのだと日垣さんは言います。これは至言だと思いました。

お店の販売員や一部の営業マンを除いて、実際に商品を売る仕事の人は少ないでしょう。けれども、あらゆる仕事は、突き詰めれば買ってもらうための手段です。公務員や政治家の仕事だって本来は同じはず。市民の税金を使ってまで行うに足る仕事かどうか、というのが一つの尺度になるはずですから。

第2章「心もリッチになる情報力」も第3章「心もリッチになる予測力」も、第1章同様、視点の転換や新規獲得を促してくれるような指摘ばかりでした。
たとえば、日垣さんは書籍などの資料代として年間500万円を費やすそうです。これは、「自分への投資は、ローリスク・ハイリターンだから」とのこと。読書は自己投資──なるほど、そういう考え方もできるのかと思いました。

人によっては、本書は凡庸なことしか書いてない、あるいは自慢ばかりが書いてある本、というように見えるかもしれません。おそらく1年前の私だったらそう思ったかも知れません。しかし、組織から独立して自分の足で歩き出してみると、日垣さんの書いていることがよくわかります。おそらく遠からず、だれもがこうした考えになるときがくるのでしょう。
そうした先取りの意味でも本書は読む価値があると思いました。本棚にしまわず、時折見直す本になりそうです。

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