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2011年2月 9日 (水)

スコーレNo.4

「スコーレNo.4」宮下奈都:著(光文社文庫)

テレビの対談番組で宮下さんの存在を知り、どうしても作品を読んでみたくなりました。話の中身は忘れてしまったものの、お話しぶりからうかがえる、ものの見方や感じ方について強く惹かれたのを覚えています。

書店に出かけると、本書がうずたかく積まれていました。見たことのある書名です。けれども気になったのは、帯に「Twitter発ベストセラー」と書いてあったこと。なんだかライト・ノベルか一部の好事家向けの本、というイメージに感じられる上、表4のあらすじは、こんな具合でした。おじさんには購入しにくい雰囲気満載ですheart01

自由奔放な妹・七葉に比べて自分は平凡だと思っている女の子・津川麻子。そんな彼女も、中学、高校、大学、就職を通して4つのスコーレ(学校)と出会い、少女から女性へと変わっていく。そして、彼女が遅まきながらやっと気づいた自分のいちばん大切なものとは…。ひとりの女性が悩み苦しみながらも成長する姿を淡く切なく美しく描きあげた傑作。

「そうか、女性向けか…weep」と思うと同時に、「『成長』っていったって、結局恋愛だよな。なんか苦手なんだよね、恋愛もの。しかもストレートなやつは。」などという考えが浮かんできます。本に限らず、買い物は素速く済ませる私にしては、ずいぶん迷ってしまいました。

それでも結局は購入しました。何事も経験ということで。
こうした迷いながらの読書だったにもかかわらず、読み始めてみたところ、みるみるうちに引き込まれてしまいました。本書は、主人公の中学校時代を描いたNo.1から、社会人として活躍するNo.4までの成長譚。それぞれの人生のステージにおいて、主人公麻子の、家族、恋愛、勉学や労働に関する思いが綴られています。
奇抜なストーリーが展開するわけでも、強烈なメッセージが伝わってくるわけでもない作品なのですが、読み終わってからしばらく、ぼ~っとなってしまうほど感動してしまいました。いったい本書の何が良かったのでしょう。じっくりと考えてみました。

一つはまず描写の説得力。No.1~No.4まででの麻子の視点、家族や異性を見る目が、着実に変化、あるいは成長しているのです。その変化が、巧みな比喩を使って実に丁寧に描写されているので、わくわくしながら読み進めることができます。
もう一つは、女性に対する人生の応援歌とも言うべきメッセージ性。女性が人生のそれぞれのステージにおいて向き合わざるを得ない、様々な壁。それに向き合う麻子のつぶやきに、宮下さんのゆるやかなメッセージが伝わってきます。たとえばNo.4でのこんな表現。

結婚のことをすごく小さく見ていたと思う。卑小なものだと感じていた。なんでもよくできたという母が、結婚によって、ただの奥さん、ただのおかあさんになってしまったと気づいたときから、私は結婚を疑いはじめた。家政能力や育児を通してしか評価されないなら私たちはなんのために学校へ行くのか、と思っていた。(中略)だけど、今は思うのだ。奥さんになっても、おかあさんになっても、ただの私の人生の一部じゃないか。
骨董がわからないという人に、父が何気ない調子で話していたのを覚えている。「音楽だとか食べ物だとか、そういうものと同じなんじゃないですか。わかるかわからないかじゃなくて、好きかどうか、大事なのはそっちです」

そう、私たちは人生のステージによって、何かになってしまうのではなく、何かを積み重ねるだけなのです。失敗しても、遠回りをしても、確実に何かを積んでいるのだと考えれば、人生に意味があると思えるではありませんか。これは男性だって同じこと。この部分を読んで、なんだか心が軽くなりました。

本書は一言で言えば「人生に安心できる小説」なのです。「おまえみたいなおっさんが、何を言うか」と叱られそうですが、私は本書を宮下さんからの応援歌として受け取りました。間違いなく、ここ数ヶ月に読んだ中で、もっとも好きな小説となりました。
近いうちに、また宮下さんの小説を読んでしまいそうです。

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