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2011年2月11日 (金)

教壇に立つのが楽しみになる修業術

「教壇に立つのが楽しみになる修業術」大前暁政:著(ひまわり社)

尊敬する先生から本書をご紹介いただき、読んでみることにしました。店頭で本書を見つけ即買いしたものの、おそらく書店で何の情報もなくこのタイトルを目にしたら、きっと購入していなかったことでしょう。なにしろ「修業」ですからねcoldsweats01。なんだかつらそうです。

ところがこの誤解、そもそも「修業」の意味の取り違えから来ていました。「修業」と「修行」は意味が違うのです。ちょっと辞書で調べてみました。

【修業】 学問・技芸などをならい修めること。
【修行】 one学問や技芸などに励み、それをみがくこと。two戒律を守ったり、悟りを開くために特定の宗教的行為を行って、仏の教えを実践すること。three生理的欲求を禁じて精神および肉体を訓練することにより、精神の浄化や神的存在との合一を得ようとする宗教的行為。
(大辞林より)

なんだかつらそうなのは、「修行」だったのです。大前さんも、「本書で言う修業は、決して苦行ではない。それどころか、楽しみながらできることである」と書いています。とはいえ、それならタイトルは、「修業術」ではなく「勉強法」とか「自己研修術」でも良さそうです。なぜ「修業」なのか──。
本書を一読した感想で申し上げると、それはおそらく「修行」の意味合いも込めたかったからではないかと想像しました。実際、第1章「なぜ修業が必要なのか」のまとめには、次のように書かれています。

「『誠意』と『情熱』と『愛情』があれば、教師としてやっていける」という迷信は、今も教師の世界に強く残っている。本書は、新卒教師から本気で、教育のプロを目指すための書である。プロであるならば、教育技術を知っていなくてはならない。プロであるならば、教育技術を身につけ、使いこなせなくてはならない。

強い言葉です。同時に教育のプロとしての矜持を感じました。「経験さえ積めばプロになれる」という迷信は、どこの業界にも存在します。大前さんは、そうした考えを真っ向から否定し、返す刀で「ではどうすればよいのか」を具体的に提示しています。
これを読みながら、ビジネスの世界で最近注目されている、「行動分析」という考え方に基づく業務改善の手法のことを思い出しました。これは、業務を遂行するときの行動をつぶさに洗い出し、結果につながる行動かどうかを分析して改善への道筋を見出す、という手法です。大前さんの提案は、まさに教師版行動分析だと思いました。

提示されている教育技術の中で、私が「へえ! そんなところまで」と思ったのが、第2章「一人ひとりが輝く学級経営をするための修業法」の中にあった、「視線を鍛える」で紹介されていた技術です。

  1. 視線を1箇所だけに送らないこと
  2. 視線を数秒間、置くこと
  3. 効き目と反対側を意識的に見ること
  4. 教室の一番後ろの子と、教室の一番前の席の子を意識してみること
  5. 全体を視野に収めながらも、一人ひとりの目を見ること

これらについて、大前さんは「書くのも恥ずかしいぐらい、何でもないこと」と書いていますが、私には驚きでした。特に3のポイントです。これは言い換えれば「自らの視野の盲点を意識する」ということでしょう。少なくとも私はこれまでの人生で、自分の利き目を意識したことなどありません。「ここまで考慮しているのか」と感嘆すると同時に、普通なら見逃してしまうことを意識することのできる大前さんに感動しました。

本書には、このように具体的な「技術」がたくさん紹介されています。中には「え!そこまではできそうにないなあ」と思えるようなものもありました。けれども本書の価値は、示された「技術」よりも、それを導き出した過程が描かれているところにあります。大前さんが、自らの「教える」という作業を見直し、「技術」を編み出した過程をトレースすることができるのです。これを参考に、自分の仕事を見直せば、きっと新たな視点が獲得できることでしょう。

本書を読んで、企画業務の管理職をしていたとき、できない部下につらく当たった自分を恥じました。結局私は、大前さんのように自分の業務を分解、分析できていなかったのです。だから教えられなかった。100%先生向けに書かれた本であるにもかかわらず、社員教育の指南書としても通用するなあと思いました。

子どもが育たないと嘆く前に、自分が修業しろ!
部下が育たないと嘆く前に、自分が修業しろ!

本書から、こんなメッセージを受け取りました。

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