« 世にも美しい数学入門 | トップページ | スポーツ・グラフィック ナンバー(2011年3/10号) »

2011年2月28日 (月)

プロフェッショナル原論

「プロフェッショナル原論」波頭亮:著(ちくま新書)

成熟日本への進路」を読んで、一気に波頭さんのファンとなり、あちこちで同書を薦めまくりました。同時に、波頭さんの他の本も読んでみたくなったのが本書の購入動機です。

もちろん内容についても興味がありました。よく仕事の厳しさを表すのに、「○○のプロ」という言い方があます。私自身もよく使ってはいたものの、「サラリーマンであってもお金もらってりゃ、プロなんじゃないの」と言われると、なんだかそんな気がしたものです。
では、いったいプロとはどんな存在なのか──それを知るために読んでみました。

「プロフェッショナル」とは、高度な知識と技術によってクライアントの依頼を適えるインディペンデントな職業だ。業態はさまざまであっても、求められるのはたゆまぬ研鑽によって培われる技量であり、最高の結果を追求するこだわりである。ますます複雑化・高度化するビジネス分野において、その仕事はさらに重要性を増している。今こそプロフェッショナルのあるべき姿のとらえなおしが必要だ。

見返し部分には、こんな勇ましい言葉が書いてありました。なんだか恰好を付けているようにも感じます。けれども本書を読む限り、どうもそうではありません。波頭さんの言う、プロフェッショナルとは、単に「高い技能を身につけ、それでお金を稼いでいる人」という意味ではなく、もっと精神的に崇高で社会的な存在のようです。
それはまず、プロフェッショナルの定義に現れています。

  1. 極めて高度な知識や技術に基づいた職能を有している
  2. 仕事は、特定のクライアント(顧客・依頼人)からの特定の依頼事項を解決する、という形式をとる
  3. 組織に属さず、仕事を自己完結することができる、という意味で、職業人として独立した存在

ご覧のように、プロフェッショナルであるためには、かなり難易度が高いようです。ですから、一般的に「プロ」と呼ばれている、野球選手や芸術家は、「特定の顧客からの依頼」で活動しているわけではないため、プロフェッショナルではないのだそうです。さらに「プロ的」と言われるサラリーマンも、いくら高度な技術を身につけていたとしても、組織に属して仕事をしている以上、プロフェッショナルではないのだとか。

この定義に基づいて、以後プロフェッショナルの仕事に対する考え方や意識、仕事の進め方の実際などが詳細に描かれています。睡眠時間を削って働く、とかゼロ泊二日の海外出張、といった働きぶりもさることながら、「Up or Out(昇進するか、さもなくば去るか)」という、コンサルティング会社の掟が印象に残りました。こうした厳しさこそが、新人をプロフェッショナルに育てて行くのでしょう。育たずにドロップアウトしてしまう人の方が多いそうですが。

本書は、全編にわたってプロフェッショナルの厳しい仕事ぶりとその崇高な意識について書かれています。それゆえ、波頭さんの自慢話と受け取る人もいるでしょう。できもしない絵空事と感じる人さえいるかもしれません。けれども、組織を離れ自らの足で歩こうとしている人、あるいは組織に属していても自分の意志で働こうとしている人には、間違いなく一つの指針を示していると思います。それを端的に示しているのが、「あとがき」にある次の部分です。

プロフェッショナルのプロフェッショナルたる所以は高度な知識や技術よりも、むしろ職業上の使命感とプロフェッショナル コード(わが身を律するための掟と規範意識)にあることは本書で繰り返し述べた通りである。(中略)プロフェッショナルは、自由で、魅力的な職業である。自己決定権と自尊の年を以て生きていくことのできる素晴らしい仕事である。

すべての人が社会の中で働いている以上、社会から何らかの恩恵を受けて仕事をしている以上、そこには社会貢献的な意識が必ず求められます。それを無視した仕事をする人や、それを課す組織や会社は存在しますが、尊敬されませんし第一永続しません。波頭さんが提唱する、職業上の使命感と規範意識というのは、何もプロフェッショナルに限ったことではなく、すべての職業人に必要な意識だと思いました。
同時に、プロフェッショナルという非常に狭い、ごく一部の人のために書かれた本が、実は普遍的な真理を含んでいるということにも感慨を受けました。非常に特殊な事例を扱っているのに、突き詰めて行くとなぜか一般化するというのは、科学や哲学の世界でもありそうで、実に興味深い現象です。そういう意味で、本書「プロフェッショナル原論」は、「職業原論」あるいは「就業原論」なのかもしれません。

|

« 世にも美しい数学入門 | トップページ | スポーツ・グラフィック ナンバー(2011年3/10号) »

ビジネス書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29188/50845118

この記事へのトラックバック一覧です: プロフェッショナル原論:

« 世にも美しい数学入門 | トップページ | スポーツ・グラフィック ナンバー(2011年3/10号) »