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2011年2月17日 (木)

「下流志向」補筆

Self

下流志向」は、非常に衝撃的な本でした。この中で、かなり引っかかることがありました。それは、若者たちの自信(Self Esteem)の話題。

内田さんは、本書の構築に当たって、苅谷剛彦さんの「階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ」という本の研究成果を引用しています。引用の意義については、次のように述べています。

苅谷さんの「階層化日本と教育危機」の中でいちばん重要なのは、この「階層下降することから達成感を引き出す子どもたちの出現」という現象を指摘したことだと僕は思います。(中略)生徒たちは単に「学校でよい成績を取ることは人間の価値と関係ない」という学校神話への否定にとどまらず、さらに踏み込んで「学校で悪い成績を取ることは人間の価値を高める」という反─学校神話に同意し始めていることがわかったのです。

この論を導き出すための証拠として、苅谷さんの著書から次の箇所を引用しています。

父、母いずれの学歴についても、1979年の時点では、親の学歴が高いほど、「自分にはすぐれてたところがある」に肯定的な回答をする生徒の割合(とくに「非常に感じる」と答えた者の比率)が高かったことがわかる。(…)ところが、97年の結果を見ると、親の学歴による差が縮小している。

相対的に出身階層の低い生徒たちにとってのみ、「将来のことを考えるより今を楽しみたい」と思うほど、「自分には人よりすぐれたところがある」という<自信>が強まるのである。

これによれば、自己効力感を持つ生徒の層が二極化している、ということになります。最近の学園ドラマでは、「不良の集団が実はいいやつ」みたいな描き方ばかりがされているように感じますので、こういう傾向は実際にあるのかもしれません。テレビは常に大衆受けするように作られているわけですから。

けれどもこの調査結果は、本当に鵜呑みにできるのだろうかという疑問も湧きました。以前に読んだ「日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか」で紹介されていた調査結果と明らかに矛盾するからです。同書は「日本の子どもたちは、成績や校種にかかわらず、なべて自尊感情が低い」と述べていました。こちらの本の調査の方が、新しいですから、数年で意識が変わった、という可能性もないではありませんが、ちょっと考えにくいことです。

もっともこれは、データに対する着目点の相違という可能性もあります。「日本の子どもの~」では、自尊感情の平均的低さを話題にしていたのに対して、「階層化日本~」では、学力が低い層でも、自尊感情が突出して高い生徒がいる、という分析なのかもしれません。
いずれにせよ、「階層化日本~」の本を読んでいないので何とも言えません。近々読んでみようと思いました。

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