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2011年2月23日 (水)

ポピュリズムへの反撃

「ポピュリズムへの反撃──現代民主主義復活の条件」山口二郎:著(角川oneテーマ21)

「ポピュリズム」という言葉は、高校時代に習ったような記憶があり、確かそのときには「衆愚政治」といった説明を受けたような気がします。しかし、その意味は愚民が集まって行う政治のことなのか、人が集まると愚民になるという意味なのか、どうにもよく分かりませんでした。
このところ、メディアなどでもよくこの言葉を目にしたことから、本書を読んでみることにしました。本書が、その目的にかなうと感じたのは、冒頭に記載された「開講の辞」に、次のような説明があったからです。

 この講義では、まずポピュリズムという概念について、歴史的におさらいをしたうえで、二十一世紀のポピュリズムが二〇世紀までのそれと異なっているという仮説を立てます。ポピュリズムの変容が、人々をして民主政治において自滅的な選択をさせたというのが、この講義全体の仮説です。そして、政治や政策決定における言葉の使い方と、大衆の動員の関係について整理してみます。
 また、日本において二〇世紀後半に形成された民主政治の仕組みを概観したうえで、新自由主義的な「構造改革」がどのように浸透し、大きな流れを作ったのかを分析します。そして、最後にこのような状況に対して反撃し、民主政治を再生させるためには何が必要かを考えてみたいと思います。

どうやらこれを読む限り、ひとくちにポピュリズムといっても、時代とともに変わって行くもののようです。そしてその新しいポピュリズムが自滅的な選択をさせた、というのですから、穏やかではありません。とても期待を持って読み始めました。

山口さんの言う「新しいポピュリズム」とは、どうやら小泉政権の時の政治のようで、第1章「ポピュリズムの誕生と変容」の中盤において「小泉政治の生んだ新型ポピュリズム」という節を立てて論じています。しかし、これがどうにも分からないのです。現象は語られるものの、新型ポピュリズムとやらの正体は何であり、それはなぜ生まれ、どのような結果をもたらしたのか、ということがまったく分からないのです。それ風の周辺情報は語られるものの、こちらとしては「新型ポピュリズムとやらがの正体は○○である」と、気持ちよく言い切って欲しいわけで、それがまったく見当たりませんでした。

頭に「?」をたくさん抱えたまま、第2章「本当の敵は誰なのか?」に突入すると、「?」は解消されるどころか、さらに増えて行きました。2章の中盤にある「ポピュリズムと『改革』の結びつき」という節においては、次のような説明が展開されていました。

小泉政治に代表される「改革の政治」は、政策的な恩恵が特定の集団や階層に偏っているという不満をエネルギーに支持を広げ、政策転換を実現しました。この構図を理解すれば、人々が自分たちを傷つけるような政策転換を歓呼の声を以て受け容れた理由がわかると思います。ここでポピュリズムと改革が結びつくわけです。つまり、ポピュリズムというのは、「われわれと奴ら」という単一の軸を設定していて、奴らに対する反発心というものを政治的なエネルギーにしていくのです。

うーむ、私の頭が悪いからでしょうか。この部分、まったく意味不明です。ポピュリズムについて定義されていないことに加えて、「改革」との関係がよくわかりません。この文章の後、いろいろと説明がなされるのですが、どうにもよくわかりません。山口さんが、小泉政治を嫌っている、ということだけは分かるのですが。

そう考えて、今一度「開講の辞」で上記に引用したところを改めて読んでみると、実はこの文も意味がよく分かりません。1段落目に仮説についての言及はあるものの、その検証過程がどこにあるのか明示されていません。それでいて、「また」で接続される2段落目では、分析すると書いてあり、さらに反撃すると書いています。あれ、これって政治運動の本だったの??? 他にも小沢一郎批判なども展開されていたものの、どうにも歯切れがよくありません。
全体として、本書はあまりに根拠薄弱で理路不鮮明であるように感じられました。

なんと、ブックブログ史上初の、徹頭徹尾批判の文章になってしまいすみません。これまでだったら、こうした本は読まなかったことにして紹介しなかったところなのに、なぜ紹介したかと申しますと、「もしかして私の読み方が間違っているのかも知れない」とも思ったからです。なにせアマゾンの評価は高いですしcoldsweats01。もしお読みになった方がおられたら、私の読み方が間違っていたとしたら、ご指摘いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。

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評論」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
前に読んで、むしろいたくおもしろいと思った記憶があったものですから、自分の書いたものを復習してみていました。
私の関心事に沿って、私のわかることだけわかるように読んだら、まあ面白かった、ということなんですかね。
今回、むらちゃんの感覚で引用部分を読んでいたら、確かに、よくわかりません。そんなものなんですね。
一応、TBさせていただきました。

投稿: 時折 | 2011年3月 1日 (火) 15時16分

時折さん、コメントありがとうございました。
私も、もし本書の前に「成熟日本への進路」を読んでいなかったら、こうしたムードだけで語る本で満足していたような気がします。けれども本書の言辞には、根拠が希薄なのであります。もっと言えば、言辞そのものが不明瞭。どうしたいのでしょうか。

「成熟日本~」があまりに明確だっただけに、曖昧さが際だったように感じられた次第です。

投稿: むらちゃん | 2011年3月 1日 (火) 22時37分

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