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2011年3月21日 (月)

16年前の光村図書の仕事

★ご注意!:この記事は光村図書様とは無関係に書いています。これをきっかけに、「この文書は今ないのか」「東日本のものはないのか」などと、問い合わせたり、資料請求したりなさらないでください。同社の迷惑となるばかりか、今後の活動にも支障を来す可能性がございます。

Soudan

「国語教育相談室」発行の経緯

私は以前、光村図書出版という会社に勤務しておりました。主に学校で使う教科書を発行している会社です。このたびの大災害に際しまして、この会社が16年前に行ったすばらしい社会貢献を思い出しました。おそらくは多くの方がご存じないことでしょうし、同社が積極的に広報することもないと思われますので、ここにご紹介させていただきます。

16年前つまり1995年の1月17日、阪神淡路大震災が発生しました。朝のテレビに映し出された阪神高速倒壊の映像は衝撃的で、今でも目に焼き付いています。当時の私は呆然とするばかりで、「自分に何ができるか」などまるで考えもしなかったのですが、当時光村図書の社長だった星野巌氏(故人)は、違いました。

震災後すぐに編集部に対して、震災後の子どもたちをことばや絵で励ますための文書を作るよう命じました。編集部は、小学校国語教科書に文章を掲載している作家、学者、挿絵を描いてくれているイラストレータに対して依頼を開始。そしてなんと、震災の約1か月後には、以下の3種類もの文書を完成させました。

  • 国語教育相談室[臨時号]1・2年生用
  • 国語教育相談室[臨時号]3・4年生用
  • 国語教育相談室[臨時号]5・6年生用

「国語教育相談室」というのは同社の広報誌名です。教科書として配布するわけにはいきませんから、同誌の[臨時号]という体裁を採ったのでしょう。製本こそされていないものの、B3サイズ、フルカラー二つ折りの立派な文書でした。
今のように、原稿をe-mailでいただくこともできなければ、印刷屋さんにデータ入稿できる時代ではありません。しかも一人一人の子どもたちに手渡すためには、何十万部も印刷する必要があるのです。これは並大抵のことではできません。素速いスピードで書いてくれた作家や学者、イラストレータの努力はもちろん、印刷会社の協力があったからこそのことでしょう。本当に素晴らしいことです。

その内容

そしてそれぞれの巻末に「先生方へ」と題して次のような文章が添えられていました。

このたびの阪神大震災に際しまして、謹んでお見舞いを申し上げます。子どもたちの受けた心身の痛みや苦しみを思いますと、言葉もありません。本紙は、教科書に執筆いただいている作家や画家、研究者の方々の、被災した子どもたちに寄せる思いを、とり急ぎまとめたものです。教育活動の一環として、ご活用いただければ幸いです。巻末になりましたが、一日も早い復興を心からお祈り申し上げます。

文中の「阪神大震災」という表記によって、本紙がいかに素速く編集されたものかがうかがい知れます。災害の名称が定まったのは、発生後2~3週間後だったと記憶しておりますので。

その配布と今後

さて、そのように大急ぎで制作されても、子どもたちの手元に届かなければ無意味です。しかし、当時の阪神淡路地区は、まだ物流網が寸断されていました。それゆえ光村図書の社員は、大阪支社から自転車に乗って、避難所一つ一つを回ってこの資料を届けたのです。毎日、毎日。印刷コストはもちろん、この人的コストを考えると、企業トップとしてこれは小さくない決断だったろうと思います。私はこのときほど、自社を誇りに思ったことはありませんでした。他の社員も同じ気持ちだったに違いありません。

おそらく今回も光村図書の方は準備を進めていることでしょう。今回の震災報道に当たり、政治家はもちろん、企業トップのあり方が話題になっています。それらの報道に接し、企業としてこうしたすばらしい社会貢献もあるのだということで、ご紹介させていただきました。

今回の震災で被害に遭われた方々が、一日も早く元気を取り戻されるよう、心から祈っています。

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コメント

国語主任届く冊子です。
わたしは、見たことがないです……。
残念。

投稿: せきちゃん | 2012年11月24日 (土) 22時16分

せきちゃんさん、コメントありがとうございます。これは子どもたちに向けて制作されたので、各校に何十部も配られたはずなんですが……。もし配られなかったとしたらとても残念です。

投稿: むらちゃん | 2012年11月24日 (土) 23時59分

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