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2011年3月11日 (金)

学級通信のアイデア40

「手軽に発行 学級通信のアイデア40――実践に生かせる!」佐藤正寿:著(ひまわり社)

このところ、すばらしい教育実践をされている先生方や「されていた」先生方にお話しをうかがっています。その方々が異口同音におっしゃっていたのが「学級通信の重要性」です。それも、内容より頻度のことをおっしゃっていた方がほとんどでした。そこで学級通信のことをもっと知ろうと購入したのが本書です。

詳しくお話を伺う前は、その重要性というのは企業で言えばCS(顧客満足)の意味だと思っていました。なにしろ家庭向けに出す文書ですからね。むろん、その意味も大きいのだそうですが、実はもっと大切なことがあるのだそうです。そのあたりのことについて、佐藤さんは「まえがき」で次のように述べています。

  • 学級通信の発行により、子どもたちをほめる機会も増えました。ちょっとした「いい話」は学級の中で必ずあります。授業での素晴らしい発言、困っている友だちを助けてくれた話・・・それらを学級通信に書き、配布時に紹介しました。
  • 学級通信を書くことが、私自身の教師修業の有効な場ともなりました。まず授業のことを書くことによって、授業記録や学級経営の記録を残すことができました。そして、学級通信をそのまま研究会のレポート資料として活用することにより実践を批評してもらいました。学級通信は、若いころの自分の貴重な財産です。
  • 20年間発行し続けた学級通信。いつの間にか自分の学級経営の大きな柱になりました。「実践をする」→「学級通信に書く」→「子どもへの励みになる・学級や保護者にもプラス」→「教師自身の励みになり次のJIS線への意欲も高まる」という好循環が、自分の仕事の中に位置づけられています。

少々長い引用となってしまいましたが、このように、保護者満足度向上のために書くと言うよりは、先生の業務能力向上に寄与するという側面が大きいようです。確かに私の経験から言っても、業務の経過を文書にまとめて報告する、という仕事は、仕事の質を高めるという点で非常に役立ったと思います。
報告書の作成は、最初は気が重いものの、慣れてくるとなんでもなくなり、1年くらい続けたあとで、過去の自分の報告書を読むと、その考えの浅薄さにがっかりするものです。逆に言えば、書いたことによって成長が感じられる、もっと言えば書くことで仕事を俯瞰し分析することができるのだと思います。先生方の場合は、提出先が保護者という外部の人間に大してですから、その厳しさは企業の比ではないでしょう。しかしだからこそ鍛えられるのだと思います。

こんな重要な学級通信について、本書は具体的なノウハウを紹介しています。私は先生ではありませんから、このノウハウが直接役立つことはもちろんありません。しかし、ここで紹介されている事例は、CSや広報、プロモーションという観点から見ると、実に興味深いものばかりでした。

たとえば「子どものよさを名前入りで」という記事。「その日であった子どもの良い点を、名前入り、しかも名前を太字にして紹介する」という手法が紹介されていました。学級通信というオフィシャルな文書に、自分の名前が掲載されしかもポジティブに紹介されていれば、だれでもうれしいものです。ましてや保護者の満足度はかなり高いものになるでしょう。
けれども、もし学級通信の発行頻度が1か月に1回だったら、とてもこんな芸当はできません。全員のよいところを書かなければならなくなり、書いたところで「みんなの良いところを無理矢理書いてるんでしょ」と思われるのが関の山。

優れた実践をされている先生方が、異口同音に「学級通信はこまめに」とおっしゃっていた意味が、この記事でよくわかりました。頻繁に発行するのが目的ではありません。学級経営や自身の教師力育成のためには、頻繁に発行せざるを得ないということなのでしょう。
この考え方は、ネット時代における企業のプロモーション手法と似通っているので、さらにおもしろいと思いました。企業と顧客の関係が、学校と保護者の関係に似てきているということなのでしょう。裏を返せば、保護者による消費者意識の高まり((C)内田樹)ということもできそうですが。

100%学校の先生向けに書かれた本書が、意外にも先生以外の人に役立ちそうであるという新たな発見をした一冊でした。それぞれの手法を紹介した図やマンガについては、若干の課題を感じた(分かりにくいのでは?という説明も散見)ものの、総じて若い先生方には参考になると思いました。2010年に増刷されている理由も分かります。企業の広報・広告関係者も一読されてみてはいかがでしょうか。

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