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2011年3月28日 (月)

星守る犬

「星守る犬」村上たかし:著(双葉社)

魅力的なタイトルに惹かれて手に取りました。帯には「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2009 泣けた本ランキング第1位」なんて、書いてあります。「最近は何でもこうやってランキングで宣伝しちゃうんだよな」と、半ばあきれながらも、ちょっと気になって読んでみることにしました。

アマゾンの「内容紹介」では次のように記載されていました。

掲載時に各媒体で異例の大反響を受けた話題作が、待望の単行本化。とある原野で、朽ち果てた車の中で寄り添うように、男性と一頭の犬の遺体が発見された。鑑定の結果は男性が死後1年。だが犬は死後わずか3ヶ月――。この時間差が意味するものとは? …それは哀しくも愉快な一人と一頭の、残されたわずかな“生”を生き抜く旅の終着点――。

「泣ける」というより切ない話でしたねえ。このあらすじにあるように、物語は男性の死体が発見されるところから始まります。この男性は、なぜ死んだのか、死ななければならなかったのか、なぜ車の中で発見されたのか、なぜ犬がいたのか、なぜ死んだ時期が大きく異なるのか。読者は、まずこの疑問を抱きながら本書を読み進めることになります。

Hoshimamoru

このマンガの特徴として、極めて映像的というか映画的ということが挙げられます。左は書き出しの1ページ。表紙のひまわりいっぱいの画面といい、この赤とんぼのアップから始まる画面といい、まるで映画を見ているようです。
もともと、手塚治虫さんが、マンガの世界に映画の手法を採り入れたといわれていますから、それ自体は珍しいことではありません。それでも少なくとも私にとっては、こうした映像性が強く印象に残りました。

それは、作者の村上さんが、絵が堪能なタイプではないからではないでしょうか。絵が得意でないから構成力を磨いた、少なくとも私にはそう見えました。多くの方が「泣ける」といった理由は、おそらくこの画面構成力によるものでしょう。それくらい、「読ませる」というより「見せる」マンガでした。

さて、気になるタイトルについて。本書の冒頭では、次のように解説されていました。

【星守る犬】犬が星を物欲しげに見続けている姿から、手に入らないものを求める人のことを表す。

「守る」とは、「見守る」だったのです。犬好きの私としては、もうこの言葉だけで読みたくなってしまいました。なかなか秀逸なタイトルです。

とはいえ、本作がこのタイトルにふさわしい内容だったかというと、私は若干、いやだいぶ疑問が残りました。このマンガに登場する犬は、手に入らないものを求めていたわけでも、そして手にできないまま死んでしまったわけでもありません。ですからもしかすると、村上さんは、

星を守っているように見える犬も、実際にはちゃんといろいろ考えていて、大切なものを手に入れているんだよ

ということが言いたかったのかも知れません。けれども少なくとも私には伝わりませんでした。もうちょっとページ数を割けば、あるいは伝わる作品になったのかも知れません。いずれにせよ、とてもいいタイトルの、優れた作品であることは間違いないものの、設定したテーマを十分昇華(消化)し切れたのかどうか、という点で、少し不満の残る作品でした。

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