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2011年3月 2日 (水)

スポーツ・グラフィック ナンバー(2011年3/10号)

「Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2011年3/10号」(文藝春秋社)

ときどき購入している本誌。購入の判断材料にしているのは、やはり特集です。今号は「名将の言葉学 2011年のリーダー論」ということで、読んでみようと思いました。表紙の写真もかっこよかったですし。

特集のトップを飾っているのは、やはり時の人ザッケローニ監督。「アルベルト・ザッケローニの人心掌握術」と題された記事は、結果論から導き出したような監督論ではなく、選手の視点から導き出した、説得力のある文章でした。

まずは日本代表でキャプテンを務めた長谷部選手へのインタビューから記事は始まります。監督は日韓戦の直前、試合前の打合せの持ち方について長谷部選手に確認を求めたと言います。長谷部選手の感想は次の通り。

(選手たちの気持ちを)確かめてくれるっていう意味で信頼されているのを感じたのと同時に、日本人の気持ちをわかろうとしていることが伝わってきました。選手に確認を取る監督ってなかなかいないじゃないですか。すごく気遣いがある監督だと思います。

代表選手という、プライドの集団を掌握して行くのは通常の組織とはまた別のマネジメントが求められるのではないかと思っていましたが、ザッケローニ監督が行ったのは、「一人一人と真摯に向き合う」という極めてオーソドックスなものでした。それは、大会途中怪我で戦列を離れた槇野選手、レギュラーとして活躍しながらも致命的なミスをした吉田選手、控えに回ることの多かった細貝選手へのインタビューでも明らかにされています。それぞれ、実に示唆に富んだ内容でした。
そして圧巻は、大会を通じて唯一人一度もフィールドに立つことの無かった森脇選手へのインタビュー。大会後には明かさなかった、ザッケローニ監督から掛けられた言葉について、初めて語っています。

監督はこう言ったんです。「オレはちゃんと見てるから。頑張っているところも、たとえさぼったとしても、サッカーもプライベートも、すべて見ているから。だから、自分を信じてやれ」。そして、こう付け加えたんです。「おまえを今回選んだのはオレだ」と。

いやあ、すごいなあと思いました。サッカーは11人でやる以上、控えに回る選手は必ずいます。彼らに「レギュラー組と同じ気持ちでやれ」と言うのは簡単です。しかし、それでは伝わりません。「オレはちゃんと見てる」「おまえを選んだのはオレだ」をセットで言われたら、意気に感じない選手はいないでしょう。人心掌握には、言葉って大事だなあと思いました。

続いては、プロ野球中日ドラゴンズの落合博満監督の記事。やはり選手へのインタビューで構成された記事は、非常に読み応えがありました。特に、セカンドの名手として知られた荒木選手を遊撃手にコンバートした真相について。次の部分が印象に残りました。

落合は選手個々の性格、チーム内における立場によって言葉の数や種類を使い分ける。ただ、その口から発せられる言葉には共通項がある。常に「情」ではなく「理」なのだ。明らかに心が折れかけていた新木に、落合は「頑張れ」とは一度も言わなかった。その代わりに放った言葉がこれだ。
「心は技術で補える。悩むのは技術がないからだ」

これは、日本の多くの指導者とは正反対の意見ではないでしょうか。「できないのは心がこもってないからだ」「必要なのは熱意だよ」なんて、私も口走っていたような気がします。しかし、それは技術があればこそ。
教育も、技術より「子どもたちを思いやる心」なんて、よく言われます。けれどもそれだって、しっかりとした技術に裏打ちされていないともろいのではないでしょうか。個人的にはあまり好きではない落合監督ですが、ドラゴンズが強い理由がよくわかる記事でした。

本誌では他にも、様々な競技における多数の名伯楽を取材していて、それぞれ楽しく読めました。中でもフィギュア女子の名選手を多数育てている山田コーチの記事が、ちょっと意外で興味深く読めました。
それから特集記事ではない「Number EYES」というコーナーで、井岡一翔選手の世界チャンピオン奪取の記事が印象的でした。井岡選手のボクシングがいかにすばらしいか、専門的に、しかも素人にも分かりやすく説明しています。スポーツ新聞も芸能ばかり追いかけていないで、こういう記事を書いて欲しいなと思いました。

今号は、スポーツに興味がない人でも、組織マネジメントに興味のある方なら十分楽しめる内容になっているのではないでしょうか。スポーツ専門誌も、いろいろな愉しみ方があるものです。

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