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2011年4月25日 (月)

学級経営10の原理・100の原則

「学級経営10の原理・100の原則困難な毎日を乗り切る110のメソッド」堀裕嗣:著(学事出版)

最近は業務上の必要があり、学級経営の本ばかり読んでいます。これまでは教育書というと、立ち読みした段階で「う~ん」となってしまう本が少なくない、という印象を持っていました。けれどもこのところ、学級経営本を集中的に読むようになって感じるのは、良い本が多いなあと言うことです。

本書も、「むむ、これはすごい」と思った本のうちの一つです。本書を開くと真っ先に目に入る「まえがき」で、まずがつんとやられます。書き出しの一文がすばらしいのです。

かつて新卒教師は失敗を重ねながら力量を高めていきました。

この一文からは、二つのことが読み取れます。一つは字義通りの意味、もう一つは「現在は新卒教師であっても、失敗が許されない時代になっている」という意味です。たった一文で二つのことを語り、なおかつ問題の所在を明らかにしてしまうのですから、すごいと思いました。堀さんは、中学校の国語の先生だということを差し引いても、なかなか書ける一文ではありません。これで一気に引き込まれてしまいました。
この前提を受けて、堀さんは次のように続けています。

新卒であろうと中堅であろうとベテランであろうと、まずしなければならないのは「失敗しない学級経営システム」を構築することなのです。(中略)若手教師はまずこうしたシステムを学ぶべきです。
安定的な学級経営システムをもっていない中堅教師も、いまそれなりに失敗しないで済んでいるのは、あなたがまだ若いからです。もう少しして、生徒との心理的距離が離れてくると学級が立ちゆかなくなっていきます。(中略)学級経営を安定させるのは教師の個人的な資質やキャラクターなどではなく、安定させるためのシステムなのだということを理解し、それを学べばいいのです。

つまり、まず大切なのは、失敗しないことだというのです。そしてシステムを学ばないと、いずれ必ず失敗するとも言います。「先生も、なかなか大変な時代になったなあ」というのが率直な感想です。

では具体的にどうすればよいのか、ということで、本書では10の原理と100の原則が示され、それぞれ簡単に解説されています。原理と原則は、通常あまり区別されないように感じますが、大辞林では「原理は主として存在や認識に、原則は主として人間の活動に関係する」と説明されていました。本書でも、原理は基本的な考え方、原則はすべて動作を表す言葉で示されています。このあたり、まずは目次をご覧ください。

  • 第1章 学級をマネジメントする10の原理
    1. 一時一事の原理
    2. 全体指導の原理
    3. 具体作業の原理
    4. 定着確認の原理
    5. 具体描写の原理
    6. 時間指定の原理
    7. 即時対応の原理
    8. 素行評価の原理
    9. 一貫指導の原理
    10. 同一歩調の原理
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  • 第2章 学級をマネジメントする100の原則
    1. 学級組織づくり10の原則
    2. 席替え10の原則
    3. 給食指導10の原則
    4. 清掃指導10の原則
    5. ショート・ホームルーム10の原則
    6. リーダー育成10の原則
    7. 学力の向上10の原則
    8. 家庭訪問10の原則
    9. 通知表所見10の原則
    10. 職員室の人間関係10の原則

第1章では、様々な指導場面における基本的な考え方や態度が示されています。かなり具体的に書かれているとともに、なぜそうしなければならないのかが明確なので、私のような素人が読んでも容易に納得できます。また、時折挿入されているコラムにおいて、この原理の元になっている、有名教育書が紹介されているので、その面でも参考になります。

第2章では、具体的な指導場面について、それを効果的に行うための原則が示されています。たとえば「席替えの原則」だったら、「男女の配置に配慮する」「机間巡視と連動させる」「小集団学習のしやすさを念頭に置く」といったタイトルで、それぞれ1ページにまとめられています。これも、そうすべき理由とセットなので説得力がありました。

私は教育実習以外は教壇に立ったことはありませんが、ちょっと大きめの部署を運営していた経験はあります。一読して感じたのは、学級経営と企業の組織運営はかなりの部分で共通していると言うことです。ここに示された原理と原則のうち、当てはまらないものを探す方が難しいくらいです。このことは、「新卒教師時代を生き抜く心得術60」でも感じました。結局人間の行為ですから、当たり前なのかも知れませんが。

ビジネスマンの参考になる教育書があり、教育者の参考になるビジネス書がある──これまで漠然と感じていたことを確信できた一冊でした。

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