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2011年4月15日 (金)

「算数」を探しに行こう!

「「算数」を探しに行こう!――「式」や「計算」のしくみがわかる五つの物語」石原清貴:著/沢田としき:イラスト(新潮文庫)

本書は「授業の復権」という本で絶賛されていた本のうちの一冊です。残念ながら絶版と言うことで、アマゾンから古本で手に入れました。

著者は小学校の先生。私は存じ上げない方ではあるものの、イラストを描いているのは、著名なイラストレーターである沢田としきさん。文庫でこれだけ有名どころを起用するということは、発行にはかなりコストがかかって(=気合いが入って)いると言うことです。これは、確かにスゴイ本なのかもしれないということで、早速読んでみました。

冒頭、沢田さんのイラストとともに、手書き風の文字で次のように書き始められています。

昔々、大昔、人間は「知恵が詰まった箱」を、思いきって開けてみた。そうしたら……中なら「数」や「計算」が飛び出したんだ!「数」や「計算」は、あっちこっちに飛んでいってしまったのさ。どこかに飛んでいってしまった。
どこかに飛んでいってしまった「数」や「計算」のことを、そうして人間は長いこと忘れてしまった。
「数」がなかったら、りんごの数だって数えられない。たくさんのりんごを前にして、「なんだかとっても不便だなあ」ってみんながぼんやり感じてた。
そりゃあそうだ。不便きわまりない。そんなときわずかな人々が、昔々、箱から飛び出してしまった大切なものがあったことを思い出したんだ。

このあたりまで読んで、正直これ以上読むのを止めようかと思いました。算数の概念を下敷きにしたお話しであるにしても、あまりに唐突、あまりに無理がありはしないかと思ったからです。「箱」って何? 「数」や「計算」を忘れるってどういうこと? これ以降もずいぶん手書きの絵本風ページは続くのですが、まったく興味をそそられません。そんなわけで、本書は購入したものの、読まずにずいぶん放置していました。

それでも、先日他に読むものがなかったとき、しぶしぶ本書を読み始めました。ところが、読み進めてみると結構面白い本だということが分かりました。
本書は全部で5つの話で成り立っています。タイトルと扱っている内容は次の通りです。

  • 第一話 数と計算、昔々 十進法の計算盤をつくった遊牧民の話
  • 第二話 れんがと面積 土地の広さを計算した職人の話
  • 第三話 倒れない柱 円周と円の面積を測った大工の話
  • 第四話 洪水は予測できるの!? 比例を発見して妹を救った少年の話
  • 第五話 さいころで国を滅ぼした王様 勝ち負けも確率を考えたイカサマ師の話

お話しの内容自体は、少々退屈(特に第一話)なのですが、数学的知識との連携のさせ方が巧みで、非常に楽しく読めました。しかも第二話、第三話と進むにつれて、話の内容自体も面白くなってゆきます。たとえば「倒れない柱」では、「なぜ円の面積を求めなければならないのか」について、柱の断面に注目させる過程が実に自然で、主人公が答えに迫る様子も実にうまく語られています。
私自身以前は、「数学は、結局は暗記科目」と考えていました。○○の公式やら○○の定理を暗記すれば一定の点数が取れたからです。そしてそうした「処理を覚える学習法」は、おそらく今も健在でしょう。しかしその学習法の最大の欠点は「おもしろくない」ということです。知的好奇心はほとんど揺さぶられません。

その点、本書の物語は、十進法や面積、比例に確率といった話題について「その考え方をすると何が分かるのか」を明確に示しています。さらに、各話のあとには、<終わりに>と<もう少し詳しく知りたい人へ>というコーナーが用意され、物語で示された数学的内容について、多角的に捉えられるような配慮が見られます。
著者の石原さんは、小学校の先生とのことです。この物語は元々子どもたちに聞かせて、算数に興味を持ってもらうために書いたのだとか。いわゆるテストの点を上げるために有効とは思えませんが、数や計算に対する興味を持たせるには確かに有効に機能したと思いました。

この4月から始まった新しい指導要領による授業。算数はかなり内容が増えたようです。子どもたちが自ら学ぼうという意欲を持つために、こうした本に示された教材研究のあり方は、実に重要だと思いました。

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