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2011年5月 5日 (木)

日経サイエンス(2011年6月号)

「日経サイエンス 2011年6月号」(日本経済新聞出版社)

今月号は、予想通り東日本大震災の特集でした。科学専門誌らしく、独自の視点でまとめられた記事は、どれも興味深いものばかりです。
それに加えて驚いたのは、アマゾンですでに在庫がないらしいこと。左の書影に、いつも記載されている新品の価格がありません(現在は復活しているようです)。これは発売間もない雑誌では、非常に珍しいことではないでしょうか。

その理由は、メインの特集記事である東日本大震災関連の記事でしょう。「東日本大震災 鳴らされていた警鐘」と「国史が語る千年前の大地動乱」、原発事故を追った「科学者の思考停止が惨事を生んだ」、そして最後に「余震はいつ止むのか」の4つの特集記事は、大変充実していました。そして大いに衝撃を受けました。

まず「東日本大震災 鳴らされていた警鐘」の記事では冒頭、こんな説明がなされています。

 1100年以上前、平安時代前期の貞観11年(西暦869年)に、「貞観地震」と呼ばれる巨大地震が発生し、大津波が三陸海岸から東北地方南部沿岸に押し寄せた。その事実が東北大学や産業技術総合研究所(産総研)活断層・地震研究センター、大阪市立大学などによる地質調査でわかってきた。産総研は調査結果を踏まえたシミュレーション研究で、津波が平野部で3~4kmも内陸まで押し寄せたことを明らかにした。(中略)
 これまで西日本については南海地震や東南海地震などの大地震が繰り返し起き、大津波が太平洋沿岸を襲ったことはよく知られていた。だが、東日本で、それらに相当する規模の地震と津波が起きていたことは、地震学者の間においても共通認識にはなっていなかった。

地震後の報道などで、「貞観地震」という言葉は、たびたび目にしました。たびたび目にしただけに、それはきっと学者の間では常識化していることなのだろうと思っていたら、そうではなかったということにまず驚きました。記事によれば、貞観地震の本格的な調査は、産総研によって、2005年から本格的に始まったのだそうです。地質調査や、土壌に含まれる微生物の遺骸から1000年以上も前の地震や津波のことがわかるのだという記事に感心するとともに、こうした研究が進められていたにもかかわらず、福島県以南ではまったく津波に対して無防備だったという事実。いつ来るかも知れない大災害に備えるというのは、なかなか難しいことなのだと、改めて感じました。

国史が語る千年前の大地動乱」の記事は、私にとってさらに衝撃的でした。貞観地震が記録されている「日本三代実録」という書物によれば、貞観地震が発生した869年の前年には播磨国で推定マグニチュード7の地震が発生しており、さらにその数年前には富士山と阿蘇山が噴火しているのです。そればかりか、貞観地震の9年後には関東(相模国と武蔵国)で大地震が発生しています。
記事では、1000年前を知ることは現在~未来を知る手掛かりになる、として、「日本三代実録」の記述を丹念に追いながら、年表付きで解説を加えていました。「近いうちに関東や東海でも」とは、うわさレベルでは語られてはいるものの、こうした歴史書を見せられてしまうと、私でも多少不安を覚えました。

福島の第一原発事故の原因と放射性物質の広がりについて予想した「科学者の思考停止が惨事を生んだ」の記事や、「余震はいつ止むのか」は、前2つの記事に比べるとボリュームが少なめではありましたが、貴重な情報でした。本誌があっという間に売り切れたのも、こうした説得力のある資料と考察記事のためではないでしょうか。

本誌ではiPS細胞に関する記事や恐竜や温暖化の記事も取り上げられてはいたものの、正直、地震特集のインパクトの前では興味が持てませんでした。逆に言えば、本誌の特集がそれだけ衝撃的な記事であったとも言えます。
東日本地震について、事前にどんなことが予想されていて、これからどんな予想が成り立つのか、ということについて興味のある方には、割高な古本を購入したとしても意味があるのではないでしょうか。

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