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2011年5月26日 (木)

必ずクラスがまとまる教師の成功術!

「必ずクラスがまとまる教師の成功術!-学級を安定させる縦糸・横糸の関係づくり」野中信行/横藤雅人:著(学陽書房)

「織物モデル」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。私は本書の著者の一人であり、「新卒教師時代を生き抜く心得術60」の著者である野中先生から初めて伺いました。学級経営を考えるとき、布を織るときの作業にたとえるとうまくゆく、という考え方なのだそうです。この「織物モデル」を創案されたのが、本書のもう一人の著者、横藤さんです。

では、「織物モデル」とは、具体的にどんなモデルなのか。本書の冒頭では次のように解説されています。

学校現場では、「こうすればうまくゆく」という考え方や具体的な手立てへのニーズが高まっている。そんな期待に応えるべく、本書では「織物モデル」を提案する。織物を織るときは、まず「縦糸を張ること」から始める。教育も、この「縦糸を張ること」に始まると考えるのだ。教育の縦糸とは、教師と生徒の上下関係を基礎とする関係づくり(しつけや返事、敬語、ルールなど)である。(中略)
しかし、縦糸だけでは織物にはならない。そこに横糸、つまり、教師と子供のフラットな心の通い合いを豊かに絡ませていかなくてはならない。横糸が絡むための適度なゆとりのある縦糸に、感情に彩られた横糸を豊かに絡ませ、厚みや温かみを併せ持った見事な織物を、出会いの日から別れの日まで織り上げてゆくのだ。

学級経営を織物モデルで捉える、特に、「彩りも厚みも温かみもある」というたとえは、美しく納得しやすい説明だと感じました。そればかりか、うまくいっていないクラスの状態は、縦横どちらかの糸しかないあるいはどちらかの糸が細くて弱い(つまり布になっていない)状態、ということで、そちらもきれいに説明できます。実にうまい比喩だと思いました。よい比喩は頭に入りやすいですから、きっと活用もしやすいことでしょう。

この定義に基づいて、縦糸の張り方、横糸の張り方が具体的に提示されています。縦糸の説明の方により多くのページ数が割かれていますから、「まず縦糸が大切」ということでしょう。「○○を指導する」というタイトルがたくさん並んでいます。

とはいえ、これは子どもたちを支配しようとしているわけではありません。あくまで教室を学習空間として機能させるための手段。ですから、「縦糸」の章の終わりの方で「縦糸張りの勘違いに注意」と題して、次のように説明しています。

縦糸をしっかり張ろうとして、次のようなことをする教師がいる。
○怖い表情を崩さない。大声で怒鳴る。
○良くない行いをした子を立たせ、他のこの前で叱責する

(中略)教室内を「ファシズム」で支配しようとしてしまうのである。
これらのファシズム的行為を続けると
(中略)子供との心のつながりの糸そのものを断ち切ることになる。(中略)
そもそも横糸を張るために縦糸を張るのである。
(中略)縦糸は感情的に張るのではなく、計算して静かに張るのである。

縦糸も横糸も、結局はよりよい教育のための手段です。手段が目的を壊してしまうことがあってはなりません。「縦糸」の章の最後では、この件とともに、もう一つ、保護者の理解を得ておくことが大切という説明もありました。確かに何の説明もなく、ちょっと厳しめの学級運営がなされると、違和感を覚える保護者も少なくないことでしょう。さすがベテラン教師は、細かい点まで配慮が行き届くものだなあと感心しました。

もちろん、横糸の解説も分かりやすいものでした。タイトルこそ、「子どもたちとの話し合いの機会を作る」「良いところを見つけて褒め続ける」「子どもたちを笑わせる」といった一般的なものではあるものの、中身は非常に具体的で、すぐにでも試せるような内容ばかりです。この部分は、先生だけでなく親の子供への接し方としても十分参考になるなと思いました。

本書の「あとがき」で野中さんは「横藤雅人先生と出会い、この「縦糸・横糸」の教育を知ったことは、私にとって最大の贈り物であった」と書いています。つまり本書は、ずっと学級経営について取り組んできた野中さんが、横藤さんの考え方に触発されて、できあがった本なのでしょう。通常共著というと、章を分けて分担するものですが、本書ではどの章もお二人がお書きになっていました。

これまで学級経営に関する本をご紹介するとき、いつも「ビジネスにも役立つ」と申し上げて参りました。本書もその例外ではありませんが、本書の場合はビジネスと言うよりも、家庭教育で参考にするとよい事例が数多くあるという印象でした。若い先生だけでなく、就学前のお子さんをお持ちの方には、お勧めしたい一冊です。

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