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2011年5月12日 (木)

授業の腕をあげる法則

「授業の腕をあげる法則」向山洋一:著(明治図書教育新書)

本書の存在は知ってはいたものの、正直敬遠していました。それでも今回読んでみようと思った理由は、先日ご紹介した「学級経営10の原理・100の原則」で「名著」として紹介されていたからです。名著の著者が名著と評する本──これは読まないわけには参りません。

まず本書の表4には、おそらく著者によるものであろう、次のような紹介文が掲載されていました。

本書は「どうやったら教師の腕があがるのか」「何をどのように努力していけばいいのか」という疑問にこたえようとしたものです。今までの常識的方法を示すと共に「定石を身につけて技量を高める」という上達の法則を示したものです。愛情と熱意だけでは教師の腕はあがりません。多くの方にとって価値ある本にと願っています。

奥付を見ると、本書の初版は1985年。そして私が購入した本は、2011年4月の版で、第103版でした。つまり102回も増し刷りしていることになります。これはすごいことです。向山さんが書いておられるとおり「多くの方にとって価値ある本」になったということなのでしょう。

実際、本書で提示されている「定石」は、非常に具体的で理にかなったものでした。教壇に立ったことのない私がなぜそう言えるかと言えば、部署をマネジメントするとき、この「定石」が通用するなと感じたからです。企業の管理職でも、「愛情と熱意だけで」なんとかなる、と考えている人は少なくありませんから。
私が「企業でも使える」と感じた部分は、たとえば指示するときの原則について。

  • 手に何か持っている状態で指示したのは指示したうちに入らない
  • おへそを先生の方に向けなさい
  • 指示の追加はしてはならない
  • 最後の行動まで示してから動かせ

これを読んだときは、少なからずはっとしました。「指示の追加はしてはならない」と「最後の行動まで示してから動かせ」の二つは、私ができていなかったことだったからです。この原則が守れなかったことで、混乱を来した経験を持つ先生は、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。少なくとも私は、いくつも思い当たることがあります。本書では他にも「何を、どれくらい」が明確になった「法則」が提示されていました。

けれども「教育が法則化できるわけがない」「マニュアル化したら終わりだよ」と考える教育関係者は、今でも少なくないでしょう。私もそう思う部分がないでもありません。しかし、本書で向山さんが明らかにしている「法則」は、明らかに知っておいた方がよい手続だと感じました。少なくとも、知らないよりはずっとよいはずです。同時に、「教える」という行為を、このように分解して提示して見せた向山さんは、優れた人だと思いました。

こうした本に対して、「こんなことは書くまでもない、教師なら誰でもやっていること」という批判も目にしますが、それは違います。行為を手順に分解し、それを分かりやすく説明するのは、言うほど簡単なことではありません。それは自分でやってみればよく分かるはずです。
1985年に刊行され、増し刷りを重ね現在も刊行されている理由が分かりました。

とはいえ、課題もあります。まず、改行(段落)が多すぎて非常に読みにくいということです。それから内容的な重複や、ムダな表現がずいぶんあります。これは今風に言えば「上から目線」ということになるでしょうか。それから、もうちょっと編集デザインを工夫すれば、もっとわかりやすく、もっと使える本になったのにな、と思います。もっとも、これらは向山さんの責任ではなく、編集者の問題ですが。

いずれにしても、読んでおいて損のない本です。価格も教育書としては破格の860円!(税別)学生さんにもぜひお勧めします。

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