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2016年6月 8日 (水)

母親やめてもいいですか

「娘が発達障害と診断されて… 母親やめてもいいですか」山口かこ:著/にしかわ たく:絵(文春文庫)

 初めて母親になるのは、誰しも不安なものです。ましてや不妊治療の末、苦労して授かったお子さんで、なおかつお子さんの発達が「他の子と違う」という場合であれば、その不安はさらに大きかった事でしょう。
 本書は、そうした書き出しで始まる、著者の体験に基づく子育てエッセイです。そして通常のエッセイと違うのは、基本的に漫画で表現されているということと、章と章の間に、児童精神科医として有名な杉山登志郎先生の解説が付いていることです。

 今や4~5%のお子さんに、発達上の凸凹(一般的には発達障害)を抱えていると言われます。凸凹という表現は、解説の杉山先生が講演した表現なので、このブログでもそのように書かせてもらっています。
 凸凹の具合によっては、親であってもお子さんとうまくコミュニケーションが取れない場合があります。本書の冒頭で描かれているお母さんの苦しみは、まさにそのコミュニケーションの取れ無さ加減。読んでいて、なかなかつらいものがあります。

 本書に登場するお子さんは、最終章では小学校高学年まで成長します。その姿についてはぜひ本書をご覧いただくとして、気になったのは本書の帯にある「賛否両論を巻き起こした超弩級の子育てコミックエッセイ」と書いてあることです。「この母親は許せない」という反応があったのだとか。
 私個人は、まったく許せないとは思いません。しかし、この反応にこそ、発達の凸凹をめぐる、世間の認識が現れているなと感じます。本書でも、自分の親や、義理の親との関係が少なくなく登場します。世間以上に、この親との関係に苦しむ親がいるのだなあと感じます。

 「インクルーシブ教育」とか、「合理的配慮」という言葉が喧伝される昨今。そうした言葉に踊らされるのではなく、本書に描かれたような、小さな現実を積み重ねて、我々は理解して行かないと、幸せな社会は築けないのではないか、そんなことを感じました。

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