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2017年3月17日 (金)

「ほめる」ポイント「叱る」ルール「認める」心得

「子どもの心をつかむ! 指導技術 「ほめる」ポイント「叱る」ルール あるがままを「認める」心得」南恵介:著(明治図書出版)

 「褒めると叱る」については、永遠のテーマと言ってもいいでしょう。最近は、教育書だけでなく、育児書でもビジネス書でもこのテーマの本が非常に多く出されています。
 ありていに言ってしまえば、「人を育てるためには、どちらも必要」ということになるでしょう。しかし、それでは本になりません。本書の価値は「認める」という世界観をベースにして、褒めることと叱ることを位置づけたことにあると思います。

 「認める」をベースにするというのは、少々分かりにくいかもしれません。そこで、南さんは、冒頭次のようなメタファーでこの3つの関係を説明しています。

  • ほめることはサプリメント
  • 叱ることは薬(毒をもって毒を制す。副作用も伴う)
  • 認めることは日常の食事

いかがでしょうか。これは非常に分かりやすいでしょう。つまり、極端に言えば、「ほめる」「叱る」は、なくてもよい一方で、「認める」がないことには、学校教育が成立しないということです。

 この認識に立って、「ほめる」「叱る」の諸相が、具体的に示されています。このうち、特に「ほめる」について説明したタイトルがユニークかつ本質的なのでいくつか紹介しましょう。

  • 言いがかりをつけるようにほめる
  • 幻をぼめる
  • 「○○さんをほめる日」と心に決める
  • 強烈な「ほめ」には影がある
  • ほめる価値を多様化させる

いかがでしょうか。これを見ていただいただけでも、ほかではあまり目にすることのできない視点だとお感じになるのではないかと思います。
 その上で見逃せないのは「ほめる」章の最終節が次のタイトルになっていることです。
「ほめること」は結局「支配」につながる
これは非常に重要な視点でしょう。「ほめる」がもっている構造的な欠点を理解しつつ「ほめる」ということですから。そしてこの認識こそが「認める」につながっていくと南さんは書いています。

 結局のところ、南さんは、教師の認知パラダイムの変更を促しているのです。教師という職業の特性として、よく「他者を変えることには熱心だが、自らは変わろうとしない人が多い」と言われます。しかし、それでは何も解決しません。
 本書を手にする方は、「ほめる・叱る」について悩んでいるか、少なくとも関心がある人でしょう。子供を褒めたり叱ったりして、よりよく変えていくためには、まず自分が変わらないと始まらないというわけです。これはおそらく多くの方が納得できる理路ではないでしょうか。

 若い先生だけでなく、中堅やベテランの先生にとっても参考になる一冊です。

 このように内容的には非常にすぐれた本書ですが、編集面では課題があると思います。読者に認知パラダイムの変更を迫るなら、南先生の主張を再構成、あるいは整理して、読者にもう少し構造的に見せる工夫が必要でしょう。特に「認める」の章では、説明が息切れしているようにも感じられました。
 実践者は、実践の意味をなかなか自分では言い表せないものです。そんなとき、編集者が読者の立場になって適切な質問をすることで、本書の中身はかなり深みのあるものに変わったことでしょう。
 私の目には、編集者が実践者に執筆を丸投げして本にしたように見えます。編集者がもう少し汗をかけば、さらによい本になったと思われるのに、残念でなりません。

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